芸術論争の歴史

基本情報

科目名
芸術論争の歴史
副題
絵画から見た絵画と写真映像表現の関係史
プログラム
異文化接触
授業タイプ
講義科目
担当教員
教員、桝田倫広
曜日
月曜日
時限
3時限
教室
36-382
授業シラバス
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授業概要

本講義は、写真映像表現と絵画との関係を、絵画の側から歴史的に考察し、現代における絵画の条件をみなさんと考えるためのものです。とりわけ60年代以降、絵画は終わったと何度となく言われてきました。コンテンポラリー・アートの状況に鑑みれば、作品の形式はインスタレーション、映像、ドキュメンテーションなど多岐にわたり、絵画はかつてほどの特権的な存在ではありません。それでもなお、造形芸術がなんらかのかたちで「イメージ」を読みとるものである以上、絵画を鑑賞し、感じとり、そして読み解いていくという作業は、あらゆる造形芸術を読み解いていくうえで基本をなすものと捉えることができるはずです。
 それでは現代における絵画の存在意義や可能性とは、一体何でしょうか。それを考えるためには、現代の絵画だけではなく、過去の歴史や系譜を振り返る必要があります。写真を含む映像表現の誕生は、絵画の制作条件に大きな影響を与えました。写真は絵画が長い間担ってきた「記録」という役割を引き受け、そのため画家は、ある種の目的から自由になる一方、意識的にせよ、無意識的にせよ、絵画とは何かという問いを常に抱きながら、制作に向き合うことになったのです。とはいえ、絵画と写真の役割を簡単に二分することはできません。両者はときには協働し、ときには反発し、ときに双方の特徴を取り入れながら、19世紀から今日までの視覚文化を豊かにしていきました。よって写真を意識しながら絵画を生み出してきた主に欧米圏の画家の取り組みを見ていくことで、近現代における絵画ならびに、造形芸術への理解を深めることができるでしょう。
 本講義では、個々の作家や作品に対峙することを重視し、1回の授業につき、1人ないし2、3人の作家の作品を考察する形式を採用します。「講義」というと受動的に聞くものという印象を抱くかもしれませんが、みなさんの積極的な参加を期待します。

授業計画

1:
第1回 オリエンテーション
本講義の目的と概要について説明します。
2:
第2回
写真史概説
3:
第3回
絵画とカメラ・オブスキュラ、フェルメールを中心に
4:
第4回
写真技術草創期における絵画②ーフランスでの反応、シャルル・ボードレールを手がかりに
5:
第5回
写真技術草創期における絵画②―イギリスでの反応、ジョン・ラスキンを手がかりに
6:
第6回
印象派からエドヴァルド・ムンクまで
7:
第7回
視点について①ーポール・セザンヌ、パブロ・ピカソ
8:
第8回
運動について①ージャクソン・ポロック
9:
第9回
運動について②ーフランシス・ベーコン
10:
第10回
消費されるイメージについて①ーロバート・ラウシェンバーグ
11:
第11回
消費されるイメージについて②ーアンディ・ウォーホル
12:
第12回
視点について②ーデヴィッド・ホックニー、チャック・クローズ
13:
第13回
記憶についてーゲルハルト・リヒター
14:
第14回
90年代から零年代の絵画ーピーター・ドイグ、リュック・タイマンス、ヴィルヘルム・サスナル
15:
第15回
全体のおさらい及び、今日の表現について

なお、授業の進度、受講生及び講師の関心に応じて、取り上げる作家や授業の内容が変わる可能性はあります。