自律の諸相

基本情報

科目名
自律の諸相
副題
自分らしさの哲学的探求
プログラム
感性文化
授業タイプ
講義科目
担当教員
教員、田原彰太郎
曜日
水曜日
時限
4時限
教室
31-208
授業シラバス
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授業概要

 自分のことは自分で決める、自分自身で考える、自分らしく生きる―こういったことを表現するための専門用語が、「自律」です。他者からコントロールされるのではなく、自分のことは自分自身で考え、決めること、あるいは、個性を大事に自分らしく生きることを、いま多くの人が重要だと見なしているように思われます。そうであれば、自律というこの概念は現代を生きる私たちにとって、重要な概念となるはずです。専門用語とは通常、ひとつの専門分野で使われる用語を指す場合が多いですが、この自律という概念は例外的に多くの学問領域や文化現象のなかで重視されています。このことは、自律という考え方が様々な角度から私たちの人生のなかに組み込まれており、重要なものと見なされている、ということを裏付けています。

 ただし、自分で決めることや自分らしく生きること、つまり、自律的であることが、本質的に何を意味しているのかを見極めることは簡単ではありません。「自分で決める」といっても、その決定のプロセスの中で他者からの影響がないと言い切れる事例はほとんど(あるいはまったく)ないはずです。また、誰とも違う独自の生き方をしている人など、ほとんど(あるいはまったく)いないでしょう。そうであれば、自分で決めること、自分らしく生きることは、どのように決め、どのように生きることなのでしょうか。

 さらに、自律的であることの理解を難しくしているのは、その価値です。自律的であることは、通常、よいことだと見なされています。しかし、本当にそうでしょうか。協調性や「空気を読むこと」が大事だとも主張されます。この主張に従えば、自分自身の意見や希望ではなく、他者との関係をこそ重視すべきだということになりそうです。他者との関係を重視すれば、自律的であることは身勝手やわがままとして否定的に評価されることもあるはずです。

 本講義では、こういった問題状況を踏まえ、哲学的考察を基礎としつつ、自律が重視されている多くの分野にも目を向け、自律とは何か、そして、自律がどのような価値を持つのかを考察します。この講義では、それらの分野として、医療、教育、倫理学(や哲学的行為論)、政治哲学、フェミニズムが取り上げられる予定です。(授業計画は以下の通りですが、内容や順番などについて、ある程度の変更の可能性があります)

授業計画

 第1回 イントロダクション
 第2回 医療①:医療倫理学におけるインフォームドコンセント
 第3回 医療②: インフォームドコンセントを通して見た自律
 第4回 教育①:教育目的としての自律
 第5回 教育②:どのような人に育てるべきか
 第6回 哲学的行為論①:欲求の階層性
 第7回 哲学的行為論②:欲求とアイデンティティ
 第8回 中間考察と今後の見通し
 第9回 政治哲学①:現代正義論における自律
 第10回 政治哲学②:リベラル・コミュニタリアン論争
 第11回 フェミニズム①:自律をめぐるフェミニズムの逡巡
 第12回 フェミニズム②:依存と独立
 第13回 自律論のさらなる展開
 第14回 全体のまとめ
 第15回 総復習(試験を含む)