複合文化論系演習(芸術思潮の越境)

基本情報

科目名
複合文化論系演習(芸術思潮の越境)
副題
芸術論における「境界」とのその「交錯」の諸位相
プログラム
異文化接触
授業タイプ
演習
担当教員
教員、馬場朗
曜日
金曜日
時限
4時限
教室
32-228
授業シラバス
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授業概要

 西洋の芸術論における「境界」と「交錯」の様々な位相を、二つの視点から大きく捉えることをも目指します。
 第一は「芸術内部」における「境界」とその「交錯」という視点です。これは、諸芸術の「パラゴーネ」という形で議論されてきたものに代表されます。「文学(ふるくは「詩」)」と「絵画」、「絵画」と「彫刻」、「絵画」と「音楽」などにおける対立と交錯を巡る議論です。これはまた、同一芸術分野内部における「境界」と「交錯」にも発展する可能性を孕んでいます。例えば、演劇における「悲劇」と「喜劇」との関係、更には絵画における「物語(=歴史)画」と「ジャンル画」(ここでは18世紀フランスにおける「風俗画」に限定されないこの語彙の用法を念頭においています)との関係などです。
 第二は、「芸術」と「その外部」における「境界」とその「交錯」という視点です。そもそも西洋において「芸術」という概念が、「自然」に対立する「人の技」を起源とする限りで、常に「人為的制度性・歴史性」に深く組み込まれたものであることは異論の余地がないでしょう。実際、「芸術」概念自体、18世紀になって初めて確立された極めて制度的で歴史的なものであるのは周知のことです。その限りで、「芸術」と「その外部」の「境界」は、第一の視点以上に、「固定的・静態的」であるどころかむしろ「可変的・流動的」であるのは当然です。
 本演習では、第一の視点に関しては、これまでそれほど注目されてこなかった「舞踊」と「絵画」との「境界」と「交錯」、「バロック・オペラ」における「音楽」と「詩(もしくは通常の悲劇)」との「境界」と「交錯」に特化して参加学生の皆さんに具体的な検証を行ってもらいます。第二の視点に関しては、アリストテレスの『詩学』における「摸倣世界」を巡る議論とその現代的な変奏、そして現代芸術論における「芸術(=アート)」の定義を巡る議論等について、参加学生の皆さんに具体的な検証を行ってもらいます。

授業計画

 第一回:オリエンテーションと関連テキスト紹介および発表分担作業
 第二回:アリストテレスにおける「詩」と「歴史」
 第三回:現代の美学における「フィクション」論(1)
 第四回:現代の美学における「フィクション」論(2)
 第五回:18世紀美学における「芸術」もしくは「芸術家」の古典的定義
 第六回:現代の美学における「芸術」の定義の拡張性・可変性
 第七回:18世紀フランスにおける「物語画」と「ジャンル画」(1)
 第八回:18世紀フランスにおける「物語画」と「ジャンル画」(2)
 第九回:ノヴェールの舞踊論(1)
 第十回:ノヴェールの舞踊論(2)
 第十一回:古代悲劇(エウリピデス)
 第十二回:古代悲劇(セネカ)
 第十三回:フランス・バロック・オペラ(1):リュリとキノー
 第十四回:フランス・バロック・オペラ(2):ラモーとペルグラン
 第十五回:全体の総括