近代日本の思想空間

基本情報

科目名
近代日本の思想空間
副題
西田幾多郎、九鬼周造、和辻哲郎、三木清、田辺元、鈴木大拙の哲学
授業タイプ
講義科目
担当教員
熊谷征一郎
曜日
火曜日
時限
6時限
教室
31-208
授業シラバス
[シラバスへのリンク]

授業概要

■本講義は、入門者向けです。
「日本の哲学がどんなものか、ちょっとかじってみよう」という方、大歓迎です。
できるだけ例をとおして具体的に解説します。
予備知識はいりません。

■明治時代以降、西洋の哲学が本格的に日本に入ってきました。
そのような中、明治から昭和にかけて、西洋の哲学者から影響を受けつつ、独特な思索をした日本の哲学者たちがいました。
本講義では、日本の哲学者たちが何を考えたのか、そのポイントを解説します。
(日本の哲学者に影響をあたえた西洋の哲学者の思想も、適宜、参照します。)

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■日本で最初の独創的な哲学者と目される人は、西田幾多郎です。
西田の思想は多岐にわたりますが、本講義では、以下の思想を解説します。
★「意志と身体運動」、「自由意志」、「脳と心」、「夢(幻覚)と現実との区別のしかた」、「時間」、「植物と動物と人間との違い」、「知覚」、「無意識」、「自己意識」、「睡眠と意識の連続」、「因果関係」(など)についての思想

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■西田とともに有名な哲学者として、九鬼周造、和辻哲郎、田辺元がいます。
本講義では、以下の思想を解説します。
★九鬼の「偶然」についての哲学、「いき」についての思想(一種の恋愛論)
★和辻の芸術論(文化論)、人間観、風土論(環境論)
★田辺の社会論、死についての思想

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■西田の有名な弟子として、三木清がいます。
本講義では、★三木の技術論を紹介します。

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■西田の若いころからの友人で、世界的に有名な仏教学者として、鈴木大拙がいます。
本講義では、★大拙の「無心」についての思想を解説します。

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■本講義では、日本の哲学についての基礎的な教養を身につけてもらいます。
また、みなさん自身が、人間の本質(など)について、柔軟で独創的な発想力をもって考えるうえでの「サンプル」ないし「叩き台」を提供します。

授業計画

第1回 オリエンテーション
本講義の概要、成績評価方法などについて説明します。

第2回 九鬼周造(1)
近年、研究が盛んになってきている日本の哲学者として、九鬼周造がいる。
本講義では、九鬼の哲学のなかでも「いき」についての思想と、「偶然」についての哲学をとりあげる。
「いき」についての思想は、一種の恋愛論である。
「いき」とは、束縛されない「自由なる浮気心」である。
まずは、「いき」とは何かについて、詳細に解説する。

第3回 九鬼周造(2)
いきな「顔」・「目つき」・「身体表現」・「服装」・「化粧」・「味」・「絵画」・「模様」・「色彩」・「照明」とはどのようなものか、解説する。

第4回 九鬼周造(3)
九鬼の「偶然」についての哲学をとりあげる。
九鬼は、「偶然」と一口に言っても、いくつかの種類があると言う。
まずは、九鬼が挙げる1種類目、2種類目の偶然を解説する。
キーワードは、「目的」、「因果関係」である。
また九鬼は、「偶然」は、算数で習うような「確率」とは違うと考える。
この点についても解説する。

第5回 九鬼周造(4)
九鬼が力点をおくのは、3-5種類目の偶然である。
キーワードは、「めぐり合わせ」、「可能性」、「本質」である。
九鬼は、偶然の感情は、「驚嘆」だと言う。この点についても解説する。

第6回 和辻哲郎(1)
和辻の芸術論(文化論)を紹介する。
そこに見られる和辻の感性は、高く評価されることが多い。
和辻は「埴輪」を美術品として見る。
そして埴輪を、縄文時代の「土偶」等と対比しながら、それぞれの特徴や魅力を語る。
まずはこれを解説する。

第7回 和辻哲郎(2)
和辻は、「仮面」に不思議な力を見いだす。
和辻が特に注目するのは「能面」である。
また、和辻は「人形劇」および「城郭」の特徴や魅力も語る。
これらについて解説する。

第8回 西田幾多郎(1)
まず、西田が哲学の出発点をどこに見いだしたかについて解説する。

第9回 西田幾多郎(2)
「知覚」についての西田の考えを解説する。
キーワードは、「記憶」、「個性」、「相貌」等である。
「夢(幻覚)と現実とを区別するしかた」についての思想も解説する。

第10回 西田幾多郎(3)
「意志と身体運動との関係」や、「因果関係」についての西田の思想を解説する。

第11回 西田幾多郎(4)
「脳と意識現象」、「自由意志」、「無意識」、「睡眠と意識の連続」、「植物と動物と人間との違い」、「時間(空間)」、「自己意識」についての西田の思想をとりあげる。
とりわけ西田の「自由意志」論は、常識的な考えかたとは大きく異なる。
その特徴を解説したい。

第12回 三木清
西田の有名な弟子の1人として、三木清がいる。
三木の思想のなかでも、注目されるのは、「技術論」である。
それを紹介したい。

第13回 田辺元
田辺は、九鬼と同様に、近年、注目されている哲学者である。
田辺の思想のなかでも、とりわけ有名なのは、個人と社会の関係についての思想である。
また、田辺の「死」についての思想もしばしばとりあげられる。
それらを解説したい。

第14回 鈴木大拙
鈴木大拙は、世界的に有名な仏教学者である。
大拙は、西田と同級生であり、生涯の友人であった。
大拙の思想には、西田からの影響もある。
本講義では、とりわけ「無心」をめぐる大拙の思想を紹介する。

第15回 和辻哲郎(3)
和辻哲郎は、「和辻倫理学」と呼ばれる壮大な体系をつくったことで有名である。
本講義では、そのベースにある基本的な「人間観」をとりあげる。
また、和辻は『風土』という著作のなかで、「環境」と人間との関係について思索している。
それも解説する。