神話と芸術

基本情報

科目名
神話と芸術
副題
西洋近現代におけるギリシャ・ローマ神話の変容
授業タイプ
講義科目
担当教員
兼利琢也
曜日
水曜日
時限
4時限
教室
36-581
授業シラバス
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授業概要

 ギリシャ神話を基礎におく古典古代文化の多種多様な姿形は,西洋世界において中世にその大部分が衰滅したものの,ルネサンス(古代再生)期──現代文化の思春期──に蘇った.以来それらは,18世紀前期まではおもに古代ローマの文学芸術を通じて,18世紀後期以降は(ローマの文物に加えて)古代ギリシャの芸術そのものが,各時代の文化的模範として常に仰がれてきた.本講義では,西洋文化の影響と関係性に直接的な連関の明らかないくつかの主題について,芸術全般にわたり現代に到るその受容と変容をたどりたい.
 20世紀後半より以前では,西洋の文化教養の基礎と頂点がギリシャローマの古典だったため,どの時代どの国でも,その時代にのみ可能な形で特定の神話や観念を再生させ,再発見・再創造を行ってきている.この講義で取り上げられる事例も,基本的にどれも各時代の芸術家の自覚的な取り組みと創造である以上,それ自体が各専門家の研究対象だが,私個人の趣向と関心に基づいて,古典学徒の目からその独自な変形を時代を縦断する形で探りたいと思う.基本的に19世紀以降から20世紀初期までを扱う.20世紀大衆文化(おもに映画)との連関では,古代ローマが中心になるため神話より古代異教文化全般に関わる.古典の普遍的な影響力を認識してもらうことがこの講義の到達目標だが,そこから古代そのものに対する新たな理解が拓けることを願っている.

授業計画

第1回
19世紀イギリスにおける古代ギリシャ理解の変遷

第2回
19世紀後期から20世紀前半におけるギリシャ神話理解

第3回
後期ヴィクトリア朝の新古典主義美術の展開1

第4回
後期ヴィクトリア朝の新古典主義美術の展開2

第5回
ヴィクトリア朝における古代ギリシャ理解

第6回
世紀末と20世紀における古代ギリシャの変容

第7回
ギリシャローマと20世紀大衆文化1(ローマ古代史映画1:『ポンペイ最後の日』の変容:初期のイタリア映画)

第8回
ギリシャローマと20世紀大衆文化2(ローマ古代史映画2:『ポンペイ最後の日』の変容:大恐慌から戦後期)

第9回
ギリシャローマと20世紀大衆文化3(ローマ古代史映画3:60年前後の古代史劇映画の絶頂と衰退,21世紀での再生)

第10回
ギリシャローマと20世紀大衆文化4(ギリシャ神話と娯楽映画1)

第11回
ギリシャローマと20世紀大衆文化5(ギリシャ神話の娯楽映画2)

第12回
オイディプース神話の変遷1:古代ギリシャの原型

第13回
オイディプース神話の変遷2:ローマ,中世,初期ルネッサンス

第14回
オイディプース神話の変遷3:近世から19世紀とロマン派

第15回
オイディプース神話の変遷5:20世紀(構造主義と暴力)
なお,以上はあくまで予定であり,少なくともいくつかは変更になる可能性が大きい(春学期の論題を秋に移すことがあるので).