アジアのことばと文化

授業基本情報

  • 開講年度:2010年度 春期
  • 科目名:アジアのことばと文化
  • 副題:
  • プログラム:言語文化
  • 授業タイプ:講義科目
  • 担当教員:上野和昭||他||李美江||岩田|孝||鈴木恵美||高梨信博||高屋亜希||中野亜里||永井匠||西村正雄||古屋昭弘||本浜秀彦
  • 曜日:水曜日 
  • 時限:7限 
  • 使用教室:戸山 36-581
  • 早稲田大学シラバス:[シラバスへのリンク]
  • Keywords:ことば||文化

授業概要

ことばを学ぶことは、そのことばを話す人々の文化を学ぶことであり、そのことばによって捉えられ、創りだされている世界観を学ぶことにほかなりません。ひとつ、またひとつと、新しいことばに取り組むたびに、あなたは新しい文化、新しい世界観に出会うことになります。アジアには、じつに多様な言語が、それぞれの人々の歴史、文化、社会によって育まれ(あるいはまた、それらを育み)ながら、相互に交流し、民族の絆として、また文化の基盤として機能していますが、そうしたアジアのことばと文化は、私たちにとって、欧米よりもむしろ遠い世界ではないでしょうか。
 この講義では、アジアの言語の中から、早稲田大学で学ぶことのできるものを中心にいくつか選び、毎週交代で専門家が入門的講義を行います。「ことば」を共通テーマとしつつも、そのことばが成り立っている文化的経緯や生活、社会、歴史、宗教など、アプローチは毎回それぞれに異なります。私たちが拠って立つ日本語から出発して、しだいに私たちをとりまくアジアの多様性に目をひらき、新たな語学にチャレンジする気持ちになるよう期待します。

授業シラバス

4月7日 ガイダンス  (上野和昭)
 毎回の講義内容から授業全体の概要を説明します。

4月14日 江戸時代の外国語辞書 高梨信博
【講義内容】
「鎖国」の時代とされる江戸時代を中心に、どのような背景のもとにどのような外国語が学ばれたのか、またそのための手がかりとしてどのような外国語辞書が編纂されたのかを紹介します。
【参考文献】
辞典協会(1996)『日本の辞書の歩み』
永嶋大典(1970)『蘭和・英和辞書発達史』
杉本つとむ(1989)『西洋人の日本語発見』

4月21日 日本語の歴史と方言 上野和昭 (オンデマンド)
【講義内容】
日本語の歴史を調べてみると、そのうちのいくつかの事象は現代諸方言にも聞かれることがある。たとえば、中世末期のキリシタン資料には、今日セというところをシェと発音していたらしいローマ字綴りがみられるが、それと同じ発音を現代方言に聞くことはさほど難しくない。このようなことを材料にしながら、文献による日本語の歴史と現代方言の言語事象とを繋ぎ合わせて、日本語の時間と空間を縦横に飛びまわってみたい。
【参考文献】
亀井 孝・河野六郎・千野栄一(1997)『日本列島の言語』言語学大辞典セレクション(三省堂)
佐藤亮一監修(2002)『お国ことばを知る方言の地図帳』(小学館)
山口仲美(2006)『日本語の歴史』岩波新書(岩波書店)

4月28日 オキナワ文学における「方言」の地位 本浜秀彦
【講義内容】
 沖縄のことばを、「方言」「言語」のいずれで捉えるのかということは、沖縄と日本(語)との関係を歴史的に問うことでもある。授業では、「沖縄口(ウチナーグチ)」の表出を試みた沖縄の近現代の文学作品を取り上げ、その記述や時代背景、作家・詩人の言語観等を検討する。
【参考文献】
 岡本恵徳・高橋敏夫編『沖縄文学選』(勉誠出版)

5月12日・19日 韓国のことばと文化     李 美江
【講義内容】
 韓国語と日本語、語順が似ている上に共通する漢字も多く、類似している点が多いといわれている。本講義では、前半で韓国語について考察し、後半でことばと文化の日韓比較を行いたいと思う。似ているようでどこか違う日本人と韓国人の思考方式をことばや具体的な事例を挙げながら考察する。
【参考文献】
李翊燮・李相億・蔡琬著、前田真彦訳(2004)『韓国語概説』大修館書店
齊藤明美(2005)『ことばと文化の日韓比較』世界思想社
中山義幸(2008)『韓国人の思考方式を知るケーススタディ&フレーズ55』アルク

5月26日  中国語――ネットがつなぐ現代中国文化圏 高屋亜希
【講義内容】
世界各地で広く使われる現代中国語のうち、中国大陸地区で使われる言語表現は政治的な言語統制との関係をぬきにして考えることができない。従来は見えにくかった言語統制の実情が、1990年代後半からのネットの普及により、一般にも見えるようになってきた。例えば2005年の反日デモの際、デモ参加をネット上で呼びかける民間の運動家は、デモ中止を呼びかける政府の検閲の目をかいくぐるため、中国語でデモを意味する「遊行(youxing)」を「YX」「遊/行」等といった表記に改めていた。時に政府系文化と対立する中国民間の文化的特徴がどのように形成され、かつ台湾・香港など他の中国語文化圏で相互にどのように引用され、差異を含みながらも共有化されているのか、言語的側面から見ていく予定である。

6月2日 漢字圏と中国語      古屋昭弘
【講義内容】
 まず類型論の角度からの中国語(方言を含む)に関する概説ののち、いわゆる「漢字圏」について俯瞰します。アジアには、文字としての漢字を使うか否かに関わらず、漢字の音による言葉すなわち字音語を縦横無尽に使う言語が幾つもあります。今回はそれらの言語(例えば日本語、朝鮮語、ベトナム語、中国国内の少数民族語など)における漢字音の役割について、実際の音声も聞きながら考えてみたいと思っています。
【参考文献】
中国の言語についての概説書としては、S.R.ラムゼイ『中国の諸言語』(高田時雄ほか訳、大修館、1990)が、少数民族語も網羅されていて便利です(但しチベット語なし)。朝鮮語とベトナム語の漢字音といえば、やや専門的ですが、河野六郎『朝鮮漢字音の研究』(河野六郎著作集2、平凡社、1979)、三根谷徹『越南漢字音の研究』(東洋文庫、1972)がバイブル的存在です。日本漢字音についての研究書はたくさんありますが、まずは沼本克明『日本漢字音の歴史』(東京堂出版、1986)から読み始めると良いでしょう。

6月9日 遊牧の民のことば―モンゴル語の世界 永井匠
【講義内容】
 モンゴル語は語順など日本語に非常によく似た側面を持つ言語です。この授業では、モンゴル語と日本語の比較を交えながら、モンゴル語がどのような特徴を持った言語なのかを分かりやすく紹介したいと思います。またできるだけモンゴルの風俗習慣や歴史にも触れたいと考えています。
【参考文献】
 モンゴルに関係のある比較的入手し易い書籍はいくつかありますが、言語のみならずモンゴルの様々な面について紹介した書物として、日本・モンゴル友好協会(編)『モンゴル入門』(三省堂選書175)、三省堂書店、1993年4月、があります。またモンゴル語については、やや高度な入門書・文法書として、小沢重男(著)『モンゴル語の話』、大学書林、1978年、があります。

6月16日 ベトナム語─言語に表れた国家・社会・個人─ 中野亜里
【講義内容】
 ベトナムは中華世界と東南アジア双方の文化的影響を受けており、言語も書き言葉としての漢語と話し言葉としての土着のベトナム語が渾然一体となっている。言語のみならず、ベトナム世界はあらゆる領域で表と裏の二元性を有していると言えるだろう。そのような視点から今日のベトナムを見てみよう。
【参考文献】
中野亜里編著『ベトナム戦争の「戦後」』めこん、2005年。
中野亜里著『現代ベトナムの政治と外交』暁印書館、2006年。
中野亜里著 『ベトナムの人権 多元的民主化の可能性』 福村出版 2009年
今井昭夫・岩井美咲編『現代ベトナムを知るための60章』明石書店、2004年。

6月23日 言葉から考える東南アジアの文化 西村正雄
【講義内容】
文化人類学の中で、民族意味論といわれる分野を紹介し、そこから分かる人々の自然認識、空間認識、時間認識の仕方の違いについて学び、そこから文化のロジックの違いを学ぶことを目的とする。
 言葉は、しばしばそれを話す人々がどのように周りの事象を分類し、整理して、認識しているのか反映する。すなわち、その文化のロジックが反映されてくる。文化人類学の中でも、民族意味論といわれる分野では、ある社会で話される特定の用語を解析し、世界の事象の分類の仕方を考える。本講義では、ラオスの言葉の中にみられる特殊な用語に焦点をあて、そこからラオスの人々が世界をどのように見て、理解しているのか探ってゆく。授業では、とくに「遺産」に関連する事象をとりあげ、それに関する言葉からラオスの人々の自然認識、空間認識、時間の認識を示し、私たちのそれとはいかに違うのか、明らかにしてゆく。
 一時間のみの授業であるため、多くの点は語れない。しかし、前半で、まず文化人類学が言葉をどのように分析してゆくのか理論的課題について述べる。特に民族意味論の分野での研究成果を紹介する。また同時にいくつかの問題提起を行う。後半で、そうして出された問題を検証してゆくため、私がフィールドワークを行ってきた、フィリピン、そして現在フィールドワークを行っているラオス南部、チャンパサックからの事例を述べる。
【参考文献】
 特定のテキストは使わない。授業ノートが重要である。参考書は授業中指示する。

6月30日 カンボジア(クメール)語    招聘講師 福富 友子
【講義内容】
 カンボジア語あるいはクメール語と呼ばれることばは、主にカンボジア国内で使用されています。独特な文字、日常生活の中で使われることばを紹介しながら、仏教や人づきあいなど、人々が大切にしている事柄を見ていきます。
 また、さまざまな伝統芸能の中からとくに、ユネスコの『無形文化遺産』リストにも載せられてた大型影絵芝居と、その演目の題材となる『リアムケー』(古代インドの大叙事詩『ラーマーヤナ』のカンボジア版)の物語を紹介します。物語の筋や登場人物の性質から、カンボジアの人々の感覚をいくらかでも理解することができるでしょう。
【参考文献】
『カンボジアを知るための60章』(上田広美・岡田知子編著、明石書店、2006)
『ニューエクスプレスカンボジア語(上田広美、白水社、2008)

7月7日 東西の思想を結ぶサンスクリット語 岩田孝
【講義内容】
サンスクリット語により書かれた書物が西洋の思想家に影響を与えたのは、19世紀の初頭におけるウパニシャッドのラテン語訳を嚆矢とする。これを契機に、ショーペンハウアー、ドイセン、ニーチェなどの哲学者は、彼等の思惟方法とは著しく異なる思惟方法がインド哲学にあることに気付き、その一部を自らの思考体系に取り入れている。しかし、西洋におけるインド思想の受容は必ずしも一様ではない。その受容の歴史を概観することにより、東アジアにおける漢訳仏典を通しての仏教思想の受容との同異を明らかにすることができる。この考察により、日本における精神文化の形成の特質を、間接的にではあるが、読み取ることができよう。

7月14日 アラビア語:言葉からみる社会・文化の多様性 鈴木恵美
【講義内容】
 アラビア語には、書き言葉と話し言葉があり、アラビア語を母国語とするものは一種の二重言語で生活している。書き言葉はコーランに書かれたアラビア語に基くもので、新聞や雑誌など文字を書く際に用いられるほか、アラブ人の共通語として、また公式の場における話し言葉として使用されている。
一方、アラビア語の方言として位置づけられる話し言葉は、日常生活で使われるものの通常文字で記述されることはない。しかし、話し言葉にはその地域の歴史や文化が色濃く反映されている。方言を分類すれば、アラビア湾岸方言、レバノン・シリア・パレスチナなどの東地中海方言、エジプト方言、フランス文化の影響を受けた北アフリカ方言があり、其々異なる特徴を持っている。授業では、書き言葉と話し言葉双方から多彩なアラブ社会と文化を概観する。
【参考文献】
佐藤次高・岡田恵美子編著『イスラーム世界のことばと文化』成文堂、2008年。


7月28日 まとめ と 教場試験    (上野和昭)

複合文化論系のイベント

【複合文化論系】小林茂先生 最終講義
イメージ画像
複合文化論系メール(複合文化論系生限定)
早稲田大学 文化構想学部 食の文化研究会公式サイト
このページのトップへ移動