複合文化論系演習(国民文学から世界文学へ)

基本情報

科目名
複合文化論系演習(国民文学から世界文学へ)
副題
宇多田ヒカルを聴く・読む・味わう、そして考える
授業タイプ
講義科目
担当教員
柿谷浩一
曜日
金曜日
時限
6時限
授業シラバス
[シラバスへのリンク]

授業概要

 宇多田ヒカルは、広大な〈文学〉の海を泳いで、その源泉を求めて突き進んでいるようだ――。
 彼女の音楽と歌詞世界から、そんな印象を強く感じることがしばしばあります。実際、宇多田は海外文学はもとより、日本文学も近代から戦後まで幅広く愛読していて、その読書家ぶりは、おすすめの本をコーナーにした「宇多田書店」と題された書店企画などでも見ることができました。制作風景に迫ったドキュメンタリー映像でみせた、ウラジミール・ナボコフ『青白い炎』の詩を朗読しながら涙し、自己の心奥にある真実を見つめて新曲(「夕凪」)の曲想を得る姿が、記憶に残っている人もいるでしょう。それは彼女の創作において、いかに文学が重要なものかを証明するだけでなく、人間と芸術を結ぶ普遍的真理のようなものに触れる崇高な瞬間を映し取っている感もありました。
 この演習クラスでは、自国の音楽・言語・文化の枠組みでは到底語りきることの出来ない「宇多田ヒカル」の音楽とその表現について、文学をキーワードにして、受講生の皆さんと多角的に考えを巡らせてみたいと思います。実際、作品への直接的に触れた言葉自体はあまり多くないように、影響関係そのものを立証することは難しいですし、それはあまり意味がないことでしょう。ですが、作品そのものから浮かび上がって見えてくる、例えばナボコフの作品を想起させるツアー名や、ヘルマン・ヘッセに重なる曲名、あるいは『平家物語』冒頭の「祇園精舎」を引用したと考えられる歌詞など、宇多田ヒカルの音楽の側にある文学について“思索”しながら作品を再考してみる。本人が愛読する文学作品と重ね、接続させながら、いま一度作品を観賞してみる。受講生各自の研究・専攻する分野の関心や知識、視点も交えながら、こうした私たちなりにできる“試み”は、宇多田の音楽の本質と、それが“文学的”としばしば呼ばれる由縁を考える意味でも、無意味ではないはずです。
 毎回、実際に楽曲に耳を傾け、歌詞を精読し、考える時間を持ってみましょう。

 【授業の具体的な進め方】
 ・受講人数にもよりますが、「個人報告+ディスカッション」の形式を中心とします。その前後で、ミニ講義回(教員による発表)を挟みます。
 ・順番に考えてみたいトピック、調べてみたいテーマなどを報告し合っていきます。それを受けて、毎回、受講者全員でディスカッションを行います。基本、レポート提出等はありません。 ・講義回以外は、私もディスカッションの参加者のひとりです。日本文学・文化、ポップカルチャーの観点から報告に対してコメント等はもちろんしますが、それ以降は一緒に考える「仲間」でありたいというのが願いです。活発に、対等に、対話をし合えたら素敵じゃないですか。

授業計画

第1回
オリエンテーション
第2回
導入講義①
第3回
導入講義②
第4回
個人発表(①ターン)
第5回
個人発表(②ターン)
第6回
個人発表(③ターン)
第7回
個人発表(④ターン)
第8回
個人発表(⑤ターン)
第9回
個人発表(⑥ターン)
第10回
個人発表(⑦ターン)
第11回
個人発表(⑧ターン)
第12回
個人発表(⑨ターン)
第13回
個人発表(⑩ターン)
第14回
個人発表(⑪ターン)
第15回
まとめ+打ち上げ