環境と人間1(マクロな視点)

基本情報

科目名
環境と人間1(マクロな視点)
副題
人間と環境の多様なかかわり方を学ぶ
授業タイプ
講義科目
担当教員
箕曲在弘
曜日
月曜日
時限
4時限
教室
34-355
授業シラバス
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授業概要

いまや人類は地球の地質や生態系に大きな影響を与える存在となっている。熱帯林破壊や海洋汚染に言及するまでもなく短期的な視点で経済発展のみを追求できる時代はすでに終わっている。本講義では、広義の環境と人間の関係を人類学の視点から捉えなおしてみる。人類学は人間の環境利用の仕方に関する多様なフィールドの知見を収集してきただけでなく、われわれの自然観に変容をもたらすさまざまな概念を提示してきた。 本講義では、人類史という大きな視点から、狩猟採集や牧畜、農耕といった環境に強く依存した生活を送る者の視点、自然とともに生きる人びとの実践知、近年の人類学の理論に至るまで多様な議論の成果をかみ砕いて解説していく。同時に、本講義では、哲学や社会学、考古学の知見を取り入れながら、これらの学問と人類学の接点を探る。

授業計画

第1回:イントロダクション—「自然」「環境」概念の多様性
本講義の目的と概要について説明します。
第2回:環境変動と「人新世」
「人新世」という概念を紹介し、人類史のなかの現代の特徴について学びます。
第3回:人類史から見る環境と人間①――多様な環境への適応
人類史において人間が多様な環境に適応してきた過程について学びます。
第4回:人類史から見る環境と人間②――遊動から定住への転換
「定住革命」という概念について紹介し、これをめぐる議論について学びます。
第5回:生業からみる社会①――シェアリングを通してみる狩猟採集民、牧畜民、農民
狩猟採集、牧畜、農耕といった生業ごとのシェアリング(共有)の方法について学びます。
第6回:生業からみる社会②――焼畑という循環型農業
一見劣ったようにみえる焼畑(移動耕作)という営みに宿る環境利用の技術について学びます。
第7回:環境をめぐるポリティクス①――コモンズの悲劇
「コモンズ」という概念を紹介し、それをめぐる議論について学びます。
第8回:環境をめぐるポリティクス②――ローカルな自然資源管理の技法
東南アジアの事例をもとに、在来の自然資源管理の技法について学びます。
第9回:持続的環境利用の視点①――環境に埋め込まれた生産と流通、消費の力学
コーヒーを事例に、わたしたちの経済活動がいかに生態的環境のなかに埋め込まれているのかを学びます。
第10回:持続的環境利用の視点②――社会変動のなかの持続的生計戦略論
東南アジアの小規模農家を事例に、「持続的生計戦略」という概念について学びます。
第11回:持続的環境利用の視点③――コミュニティ観光の可能性
環境保全のあり方のひとつとしてのエコツーリズムという概念の可能性について学びます。
第12回:環境と人間をめぐる新しいアプローチ①――アニミズムの復権
フィリップ・デスコラの議論を参照し、現代におけるアニミズムの復権について学びます。
第13回:環境と人間をめぐる新しいアプローチ②――多文化主義と多自然主義
エドゥアルド・ヴィヴェイロス・デ・カストロの「パースペクティズム」という概念を紹介し、彼のいう「多自然主義」という考え方について学びます。
第14回:環境と人間をめぐる新しいアプローチ③――多種(マルチスピーシーズ)の人類学
アナ・チンの「マツタケ」を題材とした研究を参照し、多種(マルチスピーシーズ)の人類学について学びます。
第15回:総括
これまでの講義の内容をふりかえり、人間と環境の多様なかかわり方についておさらいします。