現象学への導入

基本情報

科目名
現象学への導入
授業タイプ
講義科目
担当教員
長坂真澄
曜日
水曜日
時限
2時限
教室
未定(リアルタイム配信)
授業シラバス
[シラバスへのリンク]

授業概要

 現象学とは何か、それはなぜ、いかにして、誕生したのか。本講義では、現象学が樹立されるにいたる背景となった近代の哲学史的文脈から出発し、哲学史における現象学の革新性を解説する。とりわけ、現象学を理解する上で欠くことのできない、デカルト、ライプニッツ、ヒューム、カント、フレーゲの関連する議論を概観しつつ、フッサールがこれらの哲学から何を学び、何を問題とし、自らの方法論を彫琢していったのかを考察する。
 (※本講義は、全回に渡り、リアルタイム配信型授業として実施する。ただし、講義内容は可能な限りすべて録画し、全回ともオンデマンドでも視聴できるようにする。双方向的な講義の実現のため、リアルタイム配信への参加が望ましいが、全回ともオンデマンドで視聴した場合でも、成績評価において不利となることはない。)

授業計画

第1回 序論
講義についての説明を行う。
第2回 デカルトの方法的懐疑
『方法序説』(Discours de la méthode) (1637)、『省察』(Meditationes de prima philosophia) (1641)等より、デカルトが方法的懐疑から出発し、事物の存在証明に至る過程を概説する。
第3回 ライプニッツにおける可能性と現実性
『形而上学序説』 (Discours de métaphysique) (1686), 『モナド論』 (La Monadologie) (1714), 『理性に基づく自然と恩恵の原理』(Principes de la nature et de la grâce fondés en raison) (1714)等より、ライプニッツにおける網羅的規定の原理、充足根拠律、可能世界と現実世界の関係を概説する。
第4回 ヒュームによる自明性の揺るがし
『人間本性論』(A Treatise of Human Nature) (1739-40)より、因果律を経験的習慣とするヒュームの議論を概説する。
第5回 カントによる客観的実在性の考察
『プロレゴメナ』(Prolegomena zu einer jeden künftigen Metaphysik, die als Wissenschaft wird auftreten können) (1783)より、カントがヒュームの提出する問題を超克することを課題としたことを概説する。
第6回 カントにおけるア・プリオリな綜合判断と図式論
『純粋理性批判』(Kritik der reinen Vernunft) (1781/1787)より、カントがヒュームの提出する問いを、ア・プリオリな綜合判断を導入することにより超克しようとすることを紹介し、さらに、その判断の仕組みとして導入される図式論を、「経験の類推」及び「経験的思考一般の要請」での議論と重ね合わせつつ概説する。
第7回 フレーゲのカント批判とフッサール
『算術の基礎』(Die Grundlagen der Arithmetik) (1884)より、フレーゲのカント批判を概説した後、『算術の哲学』(Philosophie der Arithmetik)(1891)より、フッサールがフレーゲの批判を試み、カントのア・プリオリな綜合判断を換骨奪胎しつつ「収集的結合」という構想にいたることを概説する。
第8回 フッサールにおける「範疇的直観」
『論理学研究』(Logische Untersuchungen) (1900–1901/1913)第六研究より、フッサールの「範疇的直観」について、カントの「直観」概念と対照させつつ概説する。
第9回 フッサールによるヒュームの継承と批判
『イデーンI』(Ideen I) (1913)より、フッサール現象学を、ヒュームの知覚の哲学を継承すると同時に、ヒュームの懐疑論を克服する哲学として概説する。
1第10回 フッサールにおけるライプニッツ的傾向
1913年から1915年のフッサールの講義録(フッサール全集第36巻(Husserliana Bd. XXXVI))での議論を軸に、フッサールにおける現実性概念をライプニッツにおける現実性概念と比較した上で、この概念を、網羅的規定の原理やカント的意味における理念と関連づけつつ論じる。
第11回 フッサールによるデカルトの継承と批判
『デカルト的省察』(1929/1931/1950)より、フッサールの現象学的還元がいかなる意味においてデカルトの方法的懐疑を乗り越えるものであるかを概説する。
第12回 フッサールのカント批判
『ヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学』(Die Krisis der europäischen Wissenschaften und die transzendentale Phänomenologie) (1936)より、フッサールのカント批判を概説する。
第13回 カントとフッサール―ハイデガーの視点より
『カントと形而上学の問題』(Kant und das Problem der Metaphysik) (1929)でのハイデガーの議論を紹介しつつ、カントとから現象学が継承する根本的なモチーフが「想像」であることを概説し、カントの「図式」概念とフッサールの「形相」概念を比較する。
第14回 カントとフッサール―リクールの視点より
「カントとフッサール」("Kant et Husserl")(1954-1955)でのリクールの議論を紹介しつつ、カントの「コペルニクス的転回」とフッサールの「現象学的還元」の関わりについて考察する。
第15回 総括
以上の議論を総括した上で、フッサール以後の現象学の展開や、今日の現象学の動向について紹介する。