カント哲学と現代

基本情報

科目名
カント哲学と現代
副題
現代における定言命法の展開
授業タイプ
講義科目
担当教員
田原彰太郎
時限
オンデマンド
授業シラバス
[シラバスへのリンク]

授業概要

 本講義では、現代のカント主義的倫理学を取り上げます。具体的には、大きく分けて、二つの主題に取り組みます。
 一つ目の主題は、クリスティーン・コースガードが『義務とアイデンティティの倫理学』において提示しているカント主義的倫理学です。コースガードは、現代の代表的なカント主義者の一人です。コースガードの主著のひとつが『義務とアイデンティティの倫理学』です。この著作でコースガードは、目的自体としての人間性と自律というカントの考えを、独自の仕方で再構築したうえで自説に組み込み、展開しています。本講義では、この『義務とアイデンティティの倫理学』をカント的着想の現代的展開として読み解きます。この考察の際には、現代哲学においてカント的遺産の一つとして見なされている超越論的論証にも触れることになります。

 二つ目の主題は、普遍化可能性です。カント倫理学の基礎的原理は定言命法であり、その一つの方式は、大まかに言って、「普遍的法則として意欲可能な格率に従ってのみ行為せよ」という内容を持ちます。この命令内容が、現代において「普遍化可能性(universalizability, Universalisierung)と呼ばれ、カント的倫理学を代表するもののひとつとして考えられています。この普遍化可能性論を、オノラ・オニールの「行為における一貫性」(『理性の構成』所収)とコースガードの「カントの普遍的法則の方式」に即して、考察します。本講義では、この普遍化可能性が現代倫理学のどのような文脈の中でどのように解釈されているのかを読み解いていくことになります。

 カント倫理学についてある程度の知識を持っている人はここまでの記述ですでにお気づきかと思いますが、普遍化可能性(カント自身はこの言葉自体は使ってはいませんが)だけではなく、目的自体も自律も、定言命法に属するものとしてカントが提示した概念です。現在でも出版活動などを行っている現役の哲学者によるこれらの概念の再構築や解釈を扱う本講義は全体として、定言命法の現代的展開について考察するものとなるはずです。

 本講義では、たんに教員が解説をするだけではなく、受講生各自がテクストを読み、自分の意見をまとめる時間を設ける予定です。

授業計画

第1回
イントロダクション(形式的概要と講義全体の内容の説明)
第2回
カントおける目的自体と自律の基礎理解
第3回
コースガード『義務とアイデンティティの倫理学』における目的自体と自律
第4回
文献講読
第5回
文献講読に基づく超越論的論証の再構成
第6回
『義務とアイデンティティの倫理学』についての考察のまとめ
第7回
リプライ
第8回
カントにおける普遍化可能性と現代における受容
第9回
オニール「行為における一貫性」のポイント
第10回
オニール「行為における一貫性」の講読
第11回
オニールの普遍化可能性論の検討/コースガード「カントの普遍的法則の方式」のポイント
第12回
「カントの普遍的法則の方式」の講読
第13回
コースガードの普遍化可能性論の検討
第14回
リプライ
第15回
まとめとレポート執筆