早稲田大学 文化構想学部 複合文化論系

　本演習では、様々な文化社会において推進された開発、進行中の開発の在り方に関する文化人類学研究の講読、研究内容に関する受講生の発表・議論を通して、多様な文化と社会における進歩や発展に対する考えを深めていく。文化の側から開発がいかに見えるのか、その視座を身に付けることを第一の目的とする。

　授業は、以下の各部から構成されている。
　　1： はじめに　開発の概念の変遷
　　2： 近代化理論と都市開発
　　3： 持続可能な発展と観光開発
　　4： モラルエコノミー・ネオリベラルエコノミーと貧困の見方・あり方
　　5： 市民社会の形成と人間的発展に向けた共同体の在り方の模索
　　6： 総合まとめ

　各部のテーマに関連するアジア太平洋地域の事例をおもに用いて授業を進める。受講生が開発に対する人類学的視野や考察上の方法論を身に付け、それらを発表や議論の時間を通して伝達する力を養うことを目的とする。

　本演習は、教室授業を基本とし、講義回のみオンデマンド授業配信を実施する。

第1回　オリエンテーション（教室）
本講義の概要、目標、目的について説明する。また人数に応じた発表、議論グループの編成を確認していく。
第2回　講義（オンデマンド配信）　開発の思想と変遷
近代化理論から持続可能な発展へと移り変わってきた開発の思想について述べていく。
第3回　講義（オンデマンド配信）　都市化と人々の暮らし：文化は都市をいかにつくってきたか
各文化では都市がどのような考えに基づいて創造されてきたか、また、人々は近代的な都市空間でどのように生活を築き、問題をとらえてきたのかについて述べる。
第4回　発表（教室）　都市化と人々の暮らし：文化は都市をいかにつくってきたか（アジア太平洋の事例講読）
受講者が文献講読に基づいた発表を行う。文献は予め受講生に配布。
第5回　議論（教室）　アジアの都市化に関する議論
アジアの都市開発の問題に関して、小グループで討議する。テーマは予め受講生に伝達。
第6回　議論（作業）（教室）　関係者分析をしよう
1990年代より普及した開発プロジェクトの立案・実行・査定手法をもとに、開発事例の査定・プロジェクトの立案作業を行う。作業手順は教場で伝達。
第7回　講義（オンデマンド配信）　持続可能な発展と観光開発
持続可能な発展という考え方の誕生と成立の背景について再確認し、新しい観光と観光開発の在り方を考える。
第8回　発表（教室）　持続可能な観光：環境主義とオリエンタリズム（アジア太平洋の事例講読）
受講者が文献講読に基づいて発表する。文献は予め受講生に配布。
第9回　議論（教室）　観光に関わる問題に関する人文アプローチ
観光に関わる問題について、小グループで討議する。テーマは予め受講生に伝達。
第10回　講義（オンデマンド配信）　貧困とコミュニティ
現代まで、開発援助の世界におけるもっとも重要な課題の一つである貧困。そもそも貧しいとはどんな状態を指すのか、国際的定義とその変遷を学ぶ。
第11回　発表（教室）　貧困とコミュニティ（アジア太平洋の事例講読）
受講者が文献講読をもとに、それぞれの文化における貧しさと支援を考える。文献は予め受講生に配布。
第12回　議論（教室）　持続可能な観光に関する議論
観光に関わる問題を人文的に査定。改善点・方法を小グループで討議する。テーマは予め受講生に伝達。
第13回　講義（オンデマンド配信）　現代の取り組み：公共性と人類学
民間団体や市民が自らよりよい社会づくりに積極的に乗り出そうとする今日の支援・連帯を考える。また人類学的知が開発にどのように関与し、協働してきた（しようとしている)のかを学ぶ。
第14回　発表（教室）　現代の取り組み：公共性と人類学（日本・とくに東日本大震災に関連する文献講読）
受講者が文献講読を基に、公共に対する現代的関与と協働について発表する。文献は予め受講生に配布。
第15回　議論（教室）　総合まとめ
授業を総括した討議を行う。