複合文化論系演習(文化人類学学説史)

基本情報

科目名
複合文化論系演習(文化人類学学説史)
副題
エスノグラフィの実践と批評
授業タイプ
演習
担当教員
小田島理絵
曜日
土曜日
時限
3時限
教室
33-332(対面)
授業シラバス
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授業概要

 大航海時代以降、世界は拡大し、異文化接触の機会が高まった。19世紀になると、異文化を研究する専門分野として民族学・文化人類学・社会人類学が学問として誕生した。20世紀には、世界各地でフィールドワークを行うことが文化人類学の方法論となり、そこで得たデータを基に、各文化に備わる仕組み、論理の解明を行い、文化の多様性を検証してきた。現代、文化人類学の歴史的営為には様々な批評がある。自己省察を経て、文化研究の一分野として再輪郭化を図っている。
 本演習では、文化人類学的知見が築かれた道程=学説を辿りながら、世界各地の様々な文化に関わる知識が、誰によって、どのようなフィルターを通して見つめられ、翻訳され、理解されてきたかを学んでいく。教場での講義やディスカッションなどを踏まえ、受講生自らが、文化について自分で書く試みを行う。その作業を通して、文化人類学学説と文化研究への接近を試みると同時に、文化を表すことの意義、難しさ、道徳を学び、考える。

授業計画

1:
第1回 オリエンテーション
本演習の概要と目的、進行の方法について説明します。
2:
第2回 講義 世界の拡大と人類学の誕生:科学の誕生
科学の誕生に至るまでの世界・人間・文化のエピステーメを辿ります。
3:
第3回 講義 世界の拡大と人類学の誕生:人類学の誕生
人類学はなぜ誕生するに至ったのでしょうか?歴史的社会的背景から考察し、歴史的過程の中での文化の見方の変遷について講義します。
4:
第4回 発表 世界の拡大と人類学の誕生:進化主義と伝播主義
受講生が文献を講読し、要約を発表します。
5:
第5回 議論 黎明期の人類学研究視座:進化主義と伝播主義
黎明期の時代に書かれた外国の眼から見た日本に関するテクストや画像などを見ながら、小グループでディスカッションをします。
6:
第6回 講義 文化人類学と社会人類学:フィールドワークと民族誌的近代
マリノフスキー、ラドクリフ=ブラウンによって築かれたイギリス社会人類学学説およびボアズを中心に確立されたアメリカ文化人類学学説を中心に講義をします。
7:
第7回 発表 文化人類学と社会人類学:フィールドワークと民族誌的近代
マリノフスキー、ラドクリフ=ブラウン、ボアズ、ミードの基礎文献を受講生が講読し、要約を発表します。
8:
第8回 議論 方法論と客観性にまつわる様々な意見
フィールドワークとはどんなことをするのでしょうか?なぜフィールドワークが行われてきたのでしょうか?フィールドワークの方法論に関する映像をみながら、受講生が小グループでディスカッションをします。
9:
第9回 講義 「人格」「国民性」そして「ポップカルチャー」へ: アメリカと日本
ミード、ベネディクト等の心理人類学学説を中心に、アメリカで文化人類学が定着し、活用されていく過程について講義をします。文化人類学を進展させたアメリカが研究した「日本」について再考します。20世紀から21世紀の日本に関する文化人類学研究について考えます。
10:
第10回 発表 「人格」「国民性」そして「ポップカルチャー」へ: アメリカと日本
ベネディクトの研究および現代日本に関する文化人類学研究を受講生が講読し、内容を要約して発表します。
11:
第11回 議論(作業) 「日本」をみつめる Doing Ethnography at/about Japan
エスノグラフィとは、文化に関する書物を第一に指しますが、文化人類学研究が用いる主要な方法論のことでもあります。この回では、資料をもとにエスノグラフィを学び、受講生にとって身近な「日本」を文字で記録する練習をします。
12:
第12回 講義 構造・象徴・解釈・ポストモダン人類学
構造主義、象徴人類学、そしてギアツによる解釈学的転回および民族誌的営為の批評へと転回を遂げた経緯について講義をしていきます。
13:
第13回 発表 構造・象徴・解釈・ポストモダン人類学
関連の文献を受講生が講読し、要約を発表します。
14:
第14回 議論(作業) エスノグラフィ批評
受講生が自分のエスノグラフィを各自持ち寄って批評します。
15:
第15回 議論 総まとめ
文化相対主義・人道・道徳に関する議論および本演習の総まとめを行います。