複合文化論系演習(日本の美意識)

基本情報

科目名
複合文化論系演習(日本の美意識)
副題
日本の古典文化における「美」の観念
プログラム
感性文化
授業タイプ
演習
担当教員
陣野英則
曜日
金曜日
時限
6時限
教室
34-151
授業シラバス
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授業概要

 「みやび」「をかし」「もののあはれ」「わび」「さび」など、日本に独特の「美」をあらわしているようにおもわれてきた言葉は、多くの人に知られ、また用いられてもいるのだろうが、それぞれの観念を皆さんはうまく説明することができるだろうか。おそらく相当に困難であろう。
 たとえば、十世紀初頭、『古今和歌集』の仮名序と真名序などは、はやくも美的な理念を示していたといえる面があろう。しかし、そこでは中国古典(『毛詩』大序など)にかなり依拠しているといわざるをえない。そもそも、抽象的な「美」もしくは「美意識」をあらわす和語が平安時代中期あたりまではまったくなかったのである。「みやび」という古語は存在しても、それは理念とよべるものではなかった。したがって、『伊勢物語』が抽象的な理念としての「みやび」を意識してつくられたとは考えられない。『源氏物語』の「もののあはれ」にしても、近世の本居宣長が『源氏物語』(特に「螢」巻の物語論)をもとにしてあらたにつくりだした理念である。『源氏物語』の時代にそういう理念があったわけではない。
 一方、中世の日本で用いられるようになった「幽玄」などは、抽象度の高い美的観念たりえているだろう。ただし、用いられるコンテクストによってその観念の内実は相当にひらきがある。このように、個々の言葉に即してみてゆくと、簡単にはとらえにくい面が多い。
 この授業では、上記のようないくつかの問題点を確認した上で、「美」に関わる理念がどのようにしてつくりだされたのかということをさまざま考えてみたい。あわせて、そうした理念がつくりだされる前の、古典それ自体における「美」的なもののありかについても考えられれば、とおもう。
 受講者には、授業計画に掲げるテーマの中から一つを選択して発表に取り組んでもらう。詳細は第1回めのオリエンテーションで説明する。

授業計画

1: 第1回 4/12
オリエンテーション、和語による「美」のあらわし方(1)

2: 第2回 4/19
和語による「美」のあらわし方(2)、関係する文献についての説明

3: 第3回 4/26
『古今和歌集』(特に仮名序)にみられる理念と言葉(1)

4: 第4回 5/10
『古今和歌集』(特に仮名序)にみられる理念と言葉(2)

5: 第5回 5/17
カノン化した平安文学(王朝文学)について

6: 第6回 5/24
「みやび」について(担当者発表、以下第14回まで同じ)

7: 第7回 5/31
「をかし」について

8: 第8回 6/7
「もののあはれ」について(1)

9: 第9回 6/14
「もののあはれ」について(2)

10: 第10回 6/21
「いろごのみ」」「好き」「数寄」について(1)

11: 第11回 6/28
「いろごのみ」「好き」「数寄」について(2)

12: 第12回 7/5
「幽玄」について


13: 第13回 7/12
「わび」「さび」について(1)

14: 第14回 7/19
「わび」「さび」について(2)

15: 第15回 7/26
全体のまとめ