複合文化論系について
この論系は、社会・文化現象を総合的に研究する4つのプログラム(言語文化、人間文化、超域文化、感性文化)から成り立っています。その研究対象は幅広く、衣食住をはじめ、言語、文学、芸術、哲学、思想、宗教、美意識、メンタリティー、政治、経済、医療、さらには国際関係をも内包しています。
これら4つの領域は独立しているようでいて、その実は極めて強く結びついています。たとえば活版印刷術によりルネサンス期に出版された古典ギリシア語の辞書。そこでは語の意味がラテン語で説明されています。これはまぎれもなく「言語文化」の産物ですが、同時に、ルネサンス世界による古代ギリシア世界の受容として、地域と時代を超えた「超域文化」の問題ともなります。また、人間が作り出す新技術とさまざまな文化現象を考えるとき、「人間文化」に関わりますし、そしてこの人間の活動を具体的かつ普遍的に捉え、技術や文化のはらむ微妙なニュアンスを問うならば「感性文化」の問題となるでしょう。
したがって、本論系でも各プログラムは緊密に連携し、地域や時代、既成の学問ジャンルの枠を超え、各文化圏相互の関係分析や比較研究を行うことにより、人間が織り成す文化の複合的な構造を根本から解き明かすことを目指しています。そのために海外留学を奨励し、外国研究機関との連携のもと、国際舞台で活躍できる人材を養成しています。また、多種多様な科目と履修形態により、影響・対比研究やアーカイブ操作、フィールドワーク、現地実地研修、ディベート、ディスカッション、プレゼンテーションなど、さまざまな研究手法と幅広い視野を身につけられることも本論系の特長です。
言語文化プログラム
ことばは人間のあらゆる精神活動の基盤である。ことばに関して研究することは、言語学者だけの仕事ではない。人文科学を志す者にとって、ことばの問題を避けて通ることは不可能である。本プログラムは、ことばに関するさまざまなテーマに関心を抱く学生に、言語学の基礎を踏まえつつ、各自の研究を自由に展開することができる場を提供する。もちろん本プログラムでは、ことばの問題を通じてさまざまな文化現象を研究することも可能である。
人間文化プログラム(旧:文化人類学)
本プログラムは、時間と空間の枠組みを超えて、人間文化の複合的諸相を統合的視点に立って解明することを目指す。授業に関しては、フィールドワークが重視され、その構成は理論と実践をつなぐインターフェイスの科目群からなる。まず文化人類学の理論と方法論を体系的に習得した後、ゼミにおいては人類学の知識を実践の場に還元する応用人類学に重点を置いて学ぶことになる。卒業後の進路として、国際機関への就職、大学院への進学(海外も含む)などが挙げられる。
超域文化プログラム(旧:異文化接触)
異なる複数の文化体系が接触する場において、どのような現象が生じ、社会・文化のどのような変容が見られるのか。過去の異文化接触がいかなる新たな文化の潮流を形成していったかを知り、また現代世界の諸問題を異文化コミュニケーションの現実として多角的にアプローチし、多様化する世界の現在から未来を展望していく。また、言語・民族・国家・時代を超えて多様に連関する文学・芸術活動を比較・対照しつつ検討することで、人間の表現活動全般についてのより深い理解と認識を獲得することを目的とする。
感性文化プログラム
「味わい」、「装い」、「演じ」、「創り」、「愛し」、そして「死を恐れる」人間。しかしなぜ私たちはそうせずにはいられないのか。本プログラムはこの問いを前提として、人間の日常の行為と情動を、文化・社会のダイナミズムにおいて論ずる。それは、新たな思考と感性の可能性を探求することでもある。制度化された学問それ自体に対しても批判的であるような新しい学問的視野とその方法を模索し、文化の未来学を目指すと同時に、教員と学生の共同作業を実践するなかで、文化創造に向けての脱時間的・脱地域的な視野と価値理論を獲得することを目的とする。