複合文化論系演習(日本の美意識)

基本情報

科目名
複合文化論系演習(日本の美意識)
副題
日本の古典文化における「美」の観念
プログラム
感性文化
授業タイプ
演習
担当教員
教員、陣野英則
曜日
金曜日
時限
5時限
教室
31-204
授業シラバス
[シラバスへのリンク]

授業概要

いられてもいるのだろうが、それぞれの観念を皆さんはうまく説明することができるだろうか。おそらく相当に困難であろう。
 たとえば、十世紀初頭、『古今和歌集』の仮名序と真名序などには、はやくも美的な理念を示していたといえる面はある。しかし、そこでは中国古典(『毛詩』大序など)にかなり依拠しているといわざるをえない。そもそも、抽象的な「美」もしくは「美意識」をあらわす和語が平安時代中期あたりまではまったくなかったというべきである。「みやび」という古語は存在しても、それは理念とよべるものではなかった。したがって、『伊勢物語』が抽象的な理念としての「みやび」を意識して創造されたとは考えられない。『源氏物語』の「もののあはれ」にしても、近世の本居宣長が『源氏物語』(特に「蛍」巻の物語論)をもとにしてあらたにつくりだした理念である。『源氏物語』の時代にそういう理念があったわけではない。
 一方、中世以降の日本で用いられるようになった「幽玄」「わび」「さび」などは、抽象度の高い美的観念たりえているだろう。ただし、用いられるコンテクストによってその観念の内実は相当にひらきがある。このように、個々の言葉に即してみてゆくと、簡単にはとらえにくい面が多い。
 この授業では、上記のようないくつかの問題点を確認した上で、「美」に関わる理念がどのようにしてつくりだされたのかということをさまざま考えてみたい。あわせて、そうした理念がつくりだされる以前の「美」的なもののありかについても考えてもらいたいとおもう。
 受講者には、授業計画に掲げるテーマの中から一つを選択して発表に取り組んでもらう。あわせて、こうした問題に関わる課題図書数点を示し、それについても各自に学んでもらう機会をつくる。詳細は第1回めのオリエンテーションで説明する。

授業計画

1:
第1回 4/8
オリエンテーション、関係する文献についての説明

2:
第2回 4/15
和語あるいは和文による「美」のあらわし方

3:
第3回 4/22
『古今和歌集』(特に仮名序)にみられる理念と言葉(1)

4:
第4回 5/6
『古今和歌集』(特に仮名序)にみられる理念と言葉(2)

5:
第5回 5/13
カノン化した平安文学(王朝文学)について

6:
第6回 5/20
「ますらをぶり」と「たをやめぶり」
 *担当者発表、以下第14回まで同じ。

7:
第7回 5/27
「みやび」

8:
第8回 6/3
「もののあはれ」(1)

9:
第9回 6/10
「もののあはれ」(2)

10:
第10回 6/17
「いろごのみ」

11:
第11回 6/24
「幽玄」

12:
第12回 7/1
「わび」と「さび」(特に「わび」)

13:
第13回 7/8
「わび」と「さび」(特に「さび」)

14:
第14回 7/15
「いき」

15:
第15回 7/22
理解度の確認とまとめ