複合文化論系演習(主題系の研究)

基本情報

科目名
複合文化論系演習(主題系の研究)
副題
世界は『心』をどう読んでいるか―海外の『心』批評に挑戦する―
授業タイプ
演習
担当教員
宮崎かすみ
曜日
月曜日
時限
3時限
教室
34-356
授業シラバス
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授業概要

 海外の最先端の日本研究者たちは、日本文学をどう読んでいるのだろうか?とりわけ日本近代文学の正典ともいえる漱石の『心」は?ピアニストのグレン・グールドは『心』に深い影響を受けたと言われています。2014年にロンドンの大英博物館で開催された春画展が大変話題を呼んだことからもわかるように、前近代の日本のセクシュアリティとその表現は世界的な熱い注目を浴びている分野であり、研究が進んでいます。
 この授業では、漱石の『心』が海外の研究者たちにどう読まれているのかを探ります。授業前半では、『心』について論じた英文の評論、J.Keith VincentのTwoーTiming Modernity:Homosocial Narrative in Modern Japanese Fiction(2012)中で、『心』を論じている4章と5章を担当制にして輪読します。やさしい英文ではありませんが、扱っている内容が日本についてのものなので理解しやすいかと思います。前半では英文の概要を正しく理解して的確にまとめて発表する訓練をしたのち、後半では、扱われている作品、論文などを自分で探し出して読み込み、著者とは違う視点から展開させたものを発表してもらいます。受講者の英語力によっては、さらに別の英語の評論にも挑戦するかもしれません。
 いずれにせよ、日本人の日本文学研究とは一味ちがう漱石の読み方を味わってみましょう。

授業計画

 第1回:オリエンテーション。テキストや授業の狙いを紹介します。
 第2回~4回:Chap4: Soseki's Bloody Legacyを3回にわたって輪読します。受講者の英語力に応じて、3名に担当してもらうか、あるいは6名もしくは9名に担当してもらうか決めます。主に『心』の研究史、そして『心』論争をたどっている章です。
 第5回~8回:Chap.5:Kokoro and the Primal Scene of Modern Japanese Homosocialityを4回にわたって輪読します。漱石の初期の短編「趣味の遺伝」との比較から考察が始まりますので、併せて「趣味の遺伝」も読んでおく必要があります。著者のオリジナルな主張が展開される全体の山場となる論考ですので読み応えがあります。
 第9回~15回:余力があれば、もう一点英文批評を読むこともありえますが、基本的に後半は、前半で担当した箇所に出てきた論稿などを図書館で調べてきて、自分なりにフォローします。著者の言うことを鵜呑みにせずに、重要な参考文献は必ず自分で読み直してみましょう。自分なりの視点が必ず出てくるはずです。さらに原作とも突き合わせて、自分なりの『心』解釈に挑んでもらいます。