神話と芸術

基本情報

科目名
神話と芸術
副題
西洋近現代におけるギリシャ・ローマ神話の変容
授業タイプ
講義科目
担当教員
兼利琢也
曜日
水曜日
時限
4時限
教室
未定(対面)
授業シラバス
[シラバスへのリンク]

授業概要

 ギリシャ神話を基礎におく古典古代文化の多種多様な姿形は、西洋世界において中世にその大部分が衰滅したものの、ルネサンス(古代再生)期──現代文化の思春期──に蘇りました。以来それらは、18世紀前期までは古代ローマの文学芸術を通じて、18世紀後期以降は(ローマの文物に加えて)古代ギリシャの芸術が、各時代の文化的模範として仰がれました。本講義では、西洋文化の影響と関係性に直接的な連関の明らかないくつかの主題について芸術全般にわたり現代に到るその受容と変容をたどります。
 20世紀後半より以前では、西洋の文化教養の基礎と頂点がギリシャローマの古典なので、どの時代どの国も、その時その場にのみ可能な形で特定の神話や観念を再生させ、再発見・再創造を行いました。この講義で取り上げる事例も、基本的にどれも各時代の芸術家の自覚的な取り組みと創造ですから、それ自体が各専門家の研究対象です。ですが、古典学徒としての私個人の趣向と関心に基づいて、その独自な変形を時代を縦断する形で探ります。基本的に近代から20世紀初期までを扱う.20世紀の大衆文化(おもに映画)との連関では,古代ローマが中心になるため神話より古代異教文化全般に関わる。古典の普遍的な影響力を認識してもらうことがこの講義の到達目標ですが、そこから古代そのものに対する新たな理解が拓けることを願っています。

授業計画

第1回
オルペウスとその宗教1
第2回
オルペウス教と救済宗教の概念
第3回
オルフェウス神話の変遷とオペラ:1.ルネサンス、ポリツィアーノ『オルフェオの物語』
第4回
オルフェウス神話の変遷とオペラ:2.近代初期,歌劇モンテヴェルディ『オルフェオ』
第5回
オルフェウス神話の変遷とオペラ:3.古典主義からロマン派,歌劇グルック『オルフェオとエウリディーチェ』
第6回
19世紀ビクトリア朝イギリスにおける古典神話の扱いと新古典美術の展開1
第7回
19世紀ビクトリア朝イギリス新古典美術の展開2:レイトンとアルマ=タデマ
第8回
ギリシャローマと20世紀大衆文化1:ローマ古代史映画1:『ポンペイ最後の日』の変容1:最初期のサイレント映画
第9回
ギリシャローマと20世紀大衆文化2:ローマ古代史映画2:『ポンペイ最後の日』の変容2:大恐慌期と第二次世界大戦後まで
第10回
ギリシャローマと20世紀大衆文化3:ローマ古代史映画3:60年前後の古代史劇映画の絶頂と衰退、21世紀での再生
第11回
ギリシャローマと20世紀大衆文化4:ギリシャ神話の映画化
第12回
オイディプースの神話の変遷1:ソポクレース『オイディプース王』とセネカ『オエディプース王』
第13回
オイディプース神話の変遷2:現代:パゾリーニ『オイディプース王(アポロンの地獄)』
第14回
ホメーロスのオペラにおける受容1:モンテヴェルディ『ウリッセの帰郷』(17世紀)の扱いの特質
第15回
ホメーロスのオペラにおける受容2:フォーレ『ペネロープ』(19世紀末-20世紀初期)
なお、以上は予定です。準備はあるのですが各主題の扱いが延びがちで、このとおりに進んでいません。すみませんがよろしくお願いします。