複合文化論系演習(国民文学から世界文学へ)

基本情報

科目名
複合文化論系演習(国民文学から世界文学へ)
副題
3・11以後のテレビドラマ研究 ―― 震災文学論を手がかりに
授業タイプ
演習
担当教員
柿谷浩一
曜日
金曜日
時限
6時限
教室
未定(リアルタイム配信)
授業シラバス
[シラバスへのリンク]

授業概要

 文化構想学部で授業を担当しはじめた時。「3・11以後の想像力」というタイトルで、まっ先に授業テーマとして設定し、受講生と考えたのが東日本大震災以後のフィクションについてでした。あれからはや十年近く。このかん、少なくない新たな〈物語〉が生み出され、その評価や視点もさまざま拡張されてきました。
 昨年、震災から10年という節目を迎えたいま。あらためて考える機会を持ってみたいと強く思うのです。いや、持たねばならないと……。
 3・11の「あの日」以来、私たちの芸術作品に対する態度や読みのありかたは、大きく一変しました。テレビドラマとその表現も例外ではありません。震災後のドラマというと、代表的なところでは『あまちゃん』(2013)や『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(2016)、『監察医朝顔』(2019/2020~2021)等を思い起こす人が多いでしょうか。これらはかなり分かりやすい形で、直接的な表象を試みた作品ですが、こうした描き方を取らず、別の手法やスタンスでもって、震災とそれ以後の日常を鋭く切りとった作品も幾つかあります(研究対象になりうる具体的作品は下記参照)。そうした間接的あるいは寓話的、さらにはドラマの1話や部分の微細な描写もふくめ、広く〈3・11とそれ以後〉を描いたドラマ作品を点検し、検証してみたいと思います。いわゆる「あらすじ」的な、何が《描かれているか》というテーマやモチーフばかりを優先させるのではなく。それが意図的であるかどうかに関わらず(むしろ意図されていないものの方が、人間の無意識に繋がる点で重要なものと捉えて)、ドラマが映し出した映像の中に、その非直接的な表現の中に、私たちが軽視したり見落としてきたものは本当にないかも、しっかり考えてみたいと思います。テレビドラマは、大衆が観るポップカルチャーです。だからこそ作品として、画面の中に確かに描かれている(存在している)にも関わらず、誰もが《見てこなかった》ものが仮にあるとすれば、それは震災後の世界を捉える感性と想像力の欠如として、たいへん大きな問題のようにも思われるからです。
 他方、この授業を行う2022年は、震災から11年目というスタート(震災後10年の直後)。その点にも意識をはらい、今年の新作の中にテーマ的に考察すべきものがないかのチェックや検討も、適宜授業に盛り込めたらとも考えています。

 【授業の具体的な進め方】
 ☆授業スタイルは、リアルタイム配信型授業を基本とします。コロナの状況に応じて、数回程度の対面授業を挟むかもしれません。詳細は科目登録頃に「授業計画」と「備考」で示します。
 ・受講人数と関心具合にもよりますが、【①震災後のフィクション(文学を軸に)に関する文献購読(基礎テーマの抽出と確認)】、【②震災ドラマ論の現状概観】、【③実際のドラマ分析・考察】を組み合わせて進めていきます。できるだけディスカッションを大事に、前半は「購読+ディスカッション」、後半は「個人報告+ディスカッション」というイメージです。冒頭や合間に、教員による導入的な「ミニ講義」を挟みます。
 ・レポート等の課題提出は基本ありません(急な休講等の補完をのぞく)。
 ・講義回以外は、私もディスカッションの参加者のひとりです。日本文学・文化、ポップカルチャーの観点から報告に対してコメント等はもちろんしますが、それ以降は一緒に考える「仲間」でありたいというのが願いです。活発に、対等に、対話をし合えたら素敵じゃないですか。

授業計画

 この演習クラスは、集まった受講生の関心も考慮しつつ、以下のパートを柔軟に構成して
 進行していきます。

 ●担当教員による「導入講義」「ミニ講義」
 ●受講生全員での講読を含む「資料調査・検証」
 ●受講生による「報告」
 ●これらをもとにした、受講生全員による「ディスカッション」
 ●ゲスト講師による特別授業