感性の哲学

基本情報

科目名
感性の哲学
副題
カントの美学――美学の主要概念の歴史的文脈のもとで
授業タイプ
講義科目
担当教員
桑原俊介
曜日
金曜日
時限
5時限
教室
未定(対面)
授業シラバス
[シラバスへのリンク]

授業概要

この講義は、カントの美学を、感性/芸術/美/天才/想像力といった美学の主要概念に即して概念史的に検討します。まず、カント以前のこれらの主要概念の理論の概史を確認し、カントの超越論哲学の基礎理念を確認したうえで、具体的に、美の判断、崇高の判断、芸術論(制作論・天才論)、目的論(有機体論)を概念史的に検討します。講義は関連するテクストを実際に読み込む形で進めます。また余裕のある限りで、カント以降の展開にも言及します。なお、講義は【すべて対面】にて実施します。

授業計画

1:
第1回
導入:18世紀中葉における美学の成立
 講義1:美学の成立:18世紀バウムガルテンの美学の論理:50分
 講義2:近代認識能力論における「感性」理論の変化の概要:50分

【事前・事後の学修】
 事前学修:可能な限り、美学の成立に関して調べてくること。
 事後学修:授業内容に基づき、近代的な感性的認識の新しさの本質を考えること。
2:
第2回
背景(1):「美」の理論の概史
 講義1:古代からルネサンス:(1)数の形而上学、(2)光の形而上学:50分
 講義2:16世紀から18世紀:(1)美の多様化、(2)美の主観化(存在論から認識論(心理学)へ):50分

【事前・事後の学修】
 事前学修:哲学史の知識をもとに、それぞれの時代にどのような美の理論が可能か考えてみること
 事後学修:授業内容に基づく美の理論の歴史的展開の再構成。発展的な調査・思索を進めること。
3:
第3回
背景(2):「芸術(技術)」理論の概史
 講義1:(1)古代・中世のテクネー論、(2)ルネサンスのデッサン術、(3)文芸理論の変化:50分
 講義2:(1)パラゴーネ論、学問と技術、新旧論争、自由学芸の再編、バトゥー:50分

【事前・事後の学修】
 事前学修:芸術の本質的な要素は何か考えること。近代以前の芸術の社会的位置づけを考えること。
 事後学修:授業内容に基づく感性理論の歴史的展開の再構成。発展的な調査・思索を進めること。
4:
第4回
背景(3・1):「感性」の理論の概史(1)
 「趣味」論:感性の自律化・能動化
  講義1:「趣味」の成立:社交的価値の成立:グラシアン、ブウール、フランス情念論:50分
  講義2:「趣味」から「感性」へ:イギリス・モラリスト(第3の感覚)、ヴォルフ学派:50分

【事前・事後の学修】
 事前学修:「能動的な感性」という言葉の意味を考えてくること。
 事後学修:授業内容に基づく感性理論の歴史的展開の再構成。発展的な調査・思索を進めること。
5:
第5回
背景(3・2):「感性」の理論の概史(2)
 「想像力」論
  講義1:古代〜中世:アリストテレス、アヴィセンナ、ダンテ、ヘルメス主義:50分
  講義2:近代:経験論(ロック、ヒューム)、合理論(ヴォルフ、バウムガルテン)、詩論の展開:50分

【事前・事後の学修】
 事前学修:近代以前の想像力概念について可能な限り調べてくること。
 事後学修:授業内容に基づく想像力論の歴史的展開の再構成。発展的な調査・思索を進めること。
6:
第6回
カントの超越論哲学の基本理念(『第一批判』):感性と認識の構造(認識能力論の展開)
 講義1:(1)カントの形而上学と批判の理念、(2)コペルニクス的転回:50分
 講義2:(1)認識の構造(講義、人間学、『第一批判』)、(2)感性と認識の形式(超越論的条件):50分

【事前・事後の学修】
 事前学修:カントの批判哲学について、その基本的な理念を可能な限り調べ整理してくること。
 事後学修:授業内容に基づくカント哲学の基本理念を再構成すること。発展的な調査・思索を進めること。
7:
第7回
美の判断:美の超越論的規定:判断の4様式
 講義1:関係の規定:美の判断のメカニズム:50分
 講義2:量・質・様相の規定:50分

【事前・事後の学修】
 事前学修:カント哲学の基本理念からどのような美の規定が可能か考えてくること。
 事後学修:授業内容に基づくカントの美の判断理論の再構成。発展的な調査・思索を進めること。
8:
第8回
崇高の判断(1)
 講義1:(1)古代弁論術の崇高論、(2)近代的リバイバル、(3)自然神学、(4)美学の崇高:50分
 講義2:カントの崇高論:数学的崇高と力学的崇高:カント哲学内での崇高論の意味:50分

【事前・事後の学修】
 事前学修:どのような芸術作品や事物を崇高と呼べるのか、その理由もあわせて考えてくること。
 事後学修:授業内容に基づく崇高論の再構成。発展的な調査・思索を進めること。
9:
第9回
崇高の判断(2)
 講義1:美的範疇論:美概念の拡張と展開:50分
 講義2:カント以降の崇高論の展開:シラー、ヘーゲル、リオタールなど:50分

【事前・事後の学修】
 事前学修:崇高以外にどのような美的範疇が可能か考えてくること。崇高の応用の可能性を思索すること。
 事後学修:授業内容に基づく崇高論の再構成。発展的な調査・思索を進めること。
10:
第10回
芸術(技術)論(1):天才論
 講義1:(1)古代天才論(霊感論)、(2)フィチーノ、デューラー(メランコリア):50分
 講義2:(1)イギリス天才論、(2)フランス天才論、(3)カントの天才論:50分

【事前・事後の学修】
 事前学修:芸術制作には、訓練と天才どちらが重要か考えてくること。
 事後学修:授業内容に基づく天才論の再構成。発展的な調査・思索を進めること。
11:
第11回
芸術(技術)論(2):自然美と芸術美(自然/人為の歴史に即して)、美的理念の表示
 講義1:カントの自然美と芸術美:自然/人為の関係の歴史に即して:50分
 講義2:(1)美的理念の表示としての芸術制作、(2)道徳哲学との関係:50分

【事前・事後の学修】
 事前学修:自然美と芸術美の違い、芸術作品は何を表現すべきか考えてくること。
 事後学修:授業内容に基づく芸術(技術)論の再構成。発展的な調査・思索を進めること。
12:
第12回
目的論(有機体論):『判断力批判』第二部:伝統的目的論との異同、美学との関係
 講義1:伝統的目的論の概史:機械論との関係史:50分
 講義2:(1)『判断力批判』第二部の自然の目的論、(2)美学との関係:50分

【事前・事後の学修】
 事前学修:哲学史における目的論の内容を再確認すること。目的論と美学の関係を考えてくること。
 事後学修:授業内容に基づく目的論の再構成。発展的な調査・思索を進めること。
13:
第13回
判断力批判の位置づけとカント美学の継承
 講義1:『純粋理性批判』と『実践理性批判』との「橋渡し」の論理:50分
 講義2:カント美学の継承:古典主義・ロマン主義・観念論・心理(生理)学:50分

【事前・事後の学修】
 事前学修:理論哲学と実践哲学がどのような論理で美学(目的論)によって橋渡しされうるのか考えること。
 事後学修:授業内容に基づく橋渡し論と継承の再構成。発展的な調査・思索を進めること。
14:
第14回
総括:近現代美学におけるカント美学の継承と相剋
 講義1:19-20世紀の美学(哲学)におけるカントの継承と相剋:ニーチェ、メルロ=ポンティなど:50分
 講義2:21世紀の美学(哲学)におけるカントの継承と相剋:メイヤスー、ハーマンなど:50分

【事前・事後の学修】
 事前学修:カントの哲学・美学に対する自身なりの批判点を整理すること。
 事後学修:授業内容に基づく美学の継承論の再構成。発展的な調査・思索を進めること。