複合文化論系演習(現代フランス思想)

基本情報

科目名
複合文化論系演習(現代フランス思想)
副題
死を哲学する
授業タイプ
演習
担当教員
大谷崇
曜日
木曜日
時限
1時限
教室
未定(対面)
授業シラバス
[シラバスへのリンク]

授業概要

「哲学する人とは死ぬことを学ぶ(練習する)人のこと」と言ったのはプラトン『パイドン』におけるソクラテスです。もちろんこの考えはプラトン独自の哲学に基づいていて、他の哲学者すべてに対してあてはまるものではありません。哲学することイコール死ぬことを学ぶことではない、と言う人のほうがずっと多いでしょう。しかし哲学と呼ばれる思想的営みが、そのはじまりから、人間にとってこの上なく深刻な出来事である死を考察の対象にしてきたこと、そして大変真剣に死と格闘して、これをどうにか克服しようと、あるいは忘れようとしてきたこと――このことは否定できない事実のように思われます。そして今なお私たちにとっても、死は誰にでも襲ってくる深刻な現象であることは変わりがありません。



本演習では、20世紀フランスの哲学者ウラジミール・ジャンケレヴィッチの著作『死』を題材に、ジャンケレヴィッチが死について考えていることを読み解き、それを通じて私たち各々が死という現象について考えを深めることを目指します。今後の人生において、あるいは今後と言わずもう即座に、死は私たちにとって大変な問題として降りかかってきます。それについて考えを深めておくことは決して損なことではありません。

加えて、ジャンケレヴィッチは死の考察の際に、それまでの哲学的・思想的伝統に基づいたたくさんの道具立てを使っているので、それについて理解を深めることもさまざまな場面で役に立つでしょう。最後に、「死」という私たちにとても身近な現象について哲学者がどのように考察するのかを観察すれば、ものごとを抽象的に考えるすべを学ぶことができるでしょう。



授業の進め方としては、第2回までに発表担当者を決め、第3回から、担当者に担当範囲のジャンケレヴィッチがどういうことを言っているのか、発表してもらいます。それについて全員でディスカッションをし、私も随時コメントをしていきます。担当範囲の広さについては、参加人数および進行速度によって変化します。



ジャンケレヴィッチの著述スタイルはむずかしいものですが、その内容は決してそうではなく、むしろ私たちの経験に照らし合わせると理解が容易になることばかりです。テクストを読んでいるときには、この文章は私たちにとって本当に身近なことを語っているんだ、という意識を持って読むことをおすすめします。

授業計画

1:
第1回
オリエンテーション…ジャンケレヴィッチおよび著作の一般的紹介、今後の授業の進め方の確認、発表担当範囲の決定
2:
第2回
序章「死の神秘と死の現象」箇所について説明、発表担当範囲の決定
3:
第3回
第1部第1章「生きている間の死」の発表および議論
4:
第4回
第1部第2章「器官-障碍」の発表および議論
5:
第5回
第1部第3章「半開」の発表および議論
6:
第6回
第1部第4章「老化」の発表および議論
7:
第7回
第2部第1章「死の瞬間は諸範疇の外にある」の発表および議論
8:
第8回
第2部第2章「死の刹那のほとんど無」の発表および議論
9:
第9回
第2部第3章「逆行できないもの」の発表および議論
10:
第10回
第2部第4章「取り消しえないこと」の発表および議論
11:
第11回
第3部第1章「終末論流の未来」の発表および議論
12:
第12回
第3部第2章「後世の不条理さ」の発表および議論
13:
第13回
第3部第3章「虚無化の不条理さ」の発表および議論
14:
第14回
第3部第4章「事実性は滅びることはない。取り消しえないものと逆行できないもの」の発表および議論