感性の哲学

基本情報

科目名
感性の哲学
副題
美術史の哲学理論
プログラム
人間文化
授業タイプ
講義科目
担当教員
桑原俊介
曜日
月曜日
時限
4時限
授業シラバス
[シラバスへのリンク]

授業概要

 本講義では、19・20世紀の美術史を代表する「哲学的な理論」を概観します。特に、20世紀末以降の最新理論である「視覚文化論(Visual Studies)」や「イメージ学(Bildwissenschaft)」を中心に議論します。もちろん、ミュージアム論、形式主義、精神分析、イコノロジー、フェニミズムといった一般的な理論も紹介します。
 美術・芸術作品を見つめる視線には、近代以降の「芸術」という西洋近代的な制度の刻印が深く刻み込まれています。とりわけ、視覚文化論、イメージ学、ミュージアム論などでは、西洋近代的な芸術に先立つ多種多様なるイメージの使用という広い視野から、近代「芸術」のあり方を再考し、見落とされていた自明の前提に光をあてることを試みます。

授業計画

1:
第1回
導入:ある作品の分析
 講義1:ある作品の分析を通じて、美術史の基礎的な観点を確認する:50分
 講義2:同作品を、より発展的で応用的な哲学理論に即して分析する:50分

【事前・事後の学修】
 事前学修:自身が芸術作品を観る際に、どのような前提(拘束)を有しているのか、可能な限り反省しておくこと。
 事後学修:レジュメを再読することで、授業の理解度を確認すること。
2:
第2回
ミュージアム論(1):古代〜近代
 講義1:古代のムーセイオン、「コレクション」という制度、驚異の部屋(ヴンダーカンマー):50分
 講義2:ガレリア、アカデミー、サロン、愛好家の成立、スペクタクル、芸術概念の成立:50分

【事前・事後の学修】
 事前学修:美術館とは何をするところなのか、自身の体験に即して考えておくこと。
 事後学修:レジュメを再読することで、授業の理解度を確認すること。
3:
第3回
ミュージアム論(2):近代〜現代
 講義1:近代的美術館・博物館の成立(ルーヴル美術館など):50分
 講義2:眼差しの装置(フーコー、国民の創成)、ホワイトキューブ、身体工学、額縁と美術館:50分

【事前・事後の学修】
 事前学修:現代の美術館の特徴を、自身の体験に即して考えておくこと。
 事後学修:レジュメを再読することで、授業の理解度を確認すること。
4:
第4回
視覚文化論(1):遠近法と知(哲学)
  講義1:デカルト的遠近法、カメラ・オブスクーラと主体の成立:50分
  講義2:象徴形式:50分

【事前・事後の学修】
 事前学修:絵画における遠近法と、近代科学の成立にどのような関係があると考えられるのか、考えておくこと。
 事後学修:レジュメを再読することで、授業の理解度を確認すること。
5:
第5回
視覚文化論(2):19世紀 視覚の生理学
  講義1:19世紀生理学に基づく視覚の玩具、残像、錯覚、ゲーテの色彩論:50分
  講義2:印象派と生理学、視覚的無意識:50分

【事前・事後の学修】
 事前学修:視覚の成立を生理学の観点から考えておくこと。
 事後学修:レジュメを再読することで、授業の理解度を確認すること。
6:
第6回
美術史の成立(1)
 講義1:美術史の基本理念、ヴァザーリ、ヘーゲル:50分
 講義2:形式主義(ヴェルフリン、リーグルなど):50分

【事前・事後の学修】
 事前学修:美術史とはどのような哲学的な条件のもとで成立しうるのか、考えておくこと。
 事後学修:レジュメを再読することで、授業の理解度を確認すること。
7:
第7回
美術史の成立(2)
 講義1:鑑定(ルモール、モレッティ、ベレンソン):50分
 講義2:徴候学(痕跡学、犯罪学:ベルティヨン、ギンズブルグ:50分

【事前・事後の学修】
 事前学修:鑑定がどのような前提のもとで実践されているか、考えておくこと。
 事後学修:レジュメを再読することで、授業の理解度を確認すること。
8:
第8回
精神分析
 講義1:フロイト、ダ・ヴィンチ論(1):50分
 講義2:フロイト、ダ・ヴィンチ論(2):50分

【事前・事後の学修】
 事前学修:精神分析に関する基礎的な知識を学習しておくこと。
 事後学修:レジュメを再読することで、授業の理解度を確認すること。
9:
第9回
イコノロジー(パノフスキー)
 講義1:イコノロジー、イコノグラフィーの基本理念:50分
 講義2:デューラー《メランコリアⅠ》論:50分

【事前・事後の学修】
 事前学修:絵画の哲学的分析とは何を意味するのか、自分なりに考えておくこと。
 事後学修:レジュメを再読することで、授業の理解度を確認すること。
10:
第10回
メディウム論
 講義1:グリーンバーグ:メディウム・スペシフィシティ:50分
 講義2:ポスト・メディウム、フーコー『マネの絵画』:50分

【事前・事後の学修】
 事前学修:芸術制作には、訓練と天才どちらが重要か考えてくること。
 事後学修:レジュメを再読することで、授業の理解度を確認すること。
11:
第11回
フェミニズム
 講義1:ノックリン、ポロック&パーカー:アカデミズムとヌード:50分
 講義2:ニード、フーコー:50分

【事前・事後の学修】
 事前学修:美術でのフェミニズムとしてどのような問題があるか、自分なりに考えておくこと。
 事後学修:レジュメを再読することで、授業の理解度を確認すること。
12:
第12回
イメージ学(1):イメージ学の基本理念
 講義1:ブレーデカンプ(図像行為論)、ベーム(言語とは異なる図像の論理):50分
 講義2:ベルティング『イメージ人類学』:50分

【事前・事後の学修】
 事前学修:哲学史における目的論の内容を再確認すること。目的論と美学の関係を考えてくること。
 事後学修:レジュメを再読することで、授業の理解度を確認すること。
13:
第13回
イメージ学(2):地図学
 講義1:地図というイメージ実践の理念:50分
 講義2:グーグル・マップによる地図(空間)イメージの変化:50分

【事前・事後の学修】
 事前学修:地図とは何か、どのような視覚的実践を前提としているのか、自分なりに考えておくこと。
 事後学修:レジュメを再読することで、授業の理解度を確認すること。
14:
第14回
イメージ学(3):天皇の図像
 講義1:多木浩二『天皇の肖像』(1) 錦絵に描かれた天皇:50分
 講義2:多木浩二『天皇の肖像』(2) 御真影:50分

【事前・事後の学修】
 事前学修:国民の形成、権力とイメージの関係を自分なりに考えておくこと。
 事後学修:レジュメを再読することで、授業の理解度を確認すること。