複合文化論系演習(国民文学から世界文学へ)

基本情報

科目名
複合文化論系演習(国民文学から世界文学へ)
副題
エレファントカシマシの詩学 ―― 「文学」と対峙する宮本浩次
プログラム
超域文化
授業タイプ
演習
担当教員
柿谷浩一
曜日
金曜日
時限
5時限
授業シラバス
[シラバスへのリンク]

授業概要

――部屋を埋め尽くす本の山。森鷗外・太宰治・曲亭馬琴……。

 アルバム制作に密着したドキュメンタリー映画『扉の向こう』(2004)のなかで、自室の書斎(本棚)を捉えて、流れるナレーション。そこで映し出される夥しい蔵書には、文学全集のほか、歴史地史の専門書が所せましと並んでいる。読書家としても知られる宮本の、とりわけ日本の近代文学への造詣は、単なる個人の趣味嗜好や作家への憧憬というレベルをこえて、並大抵ではない熱量と深さでもって、彼の「うた」の魂となっている。彼の作る文学的な歌詞は、膨大で厚いそれら〈読書〉の経験、〈文学との対話〉の渦から生まれているものに他ならない。これ以外にも、永井荷風・夏目漱石・国木田独歩など、作品に見てとれる作家・作品の影はさまざまある。そのかたちも、歌詞に直接的に文豪の名が出てくる、その生涯を論評してみせるもの、明示はされていないがボキャブラリーとしてあきらかな重なりや連関がみられるものなど、多様だ。

 このクラスでは、こうしたエレファントカシマシ、またソロ活動を含む宮本浩次の「歌詞のことば」がみせる、「文学」との対話・呼吸・交錯を読み解いてみます。ただ作詞活動や作品に影響関係を見出すだけではなく、〈文学を愛すること〉〈小説家への想い〉を歌詞として書きつけ、そしてロックとして歌う意味。またそれを聴く側の稀有な体験と感銘とは何たるか。それらについても、柔軟かつ多面的に触れられる考察が出来ればと考えています。取り上げる文学作品の具体的候補としては、森鷗外『渋江抽斎』、永井荷風『日和下駄』、国木田独歩『武蔵野』辺りが、有名なところで、まず挙がるでしょうか。これに限らず、代表曲や名曲と呼ばれるなかから、各自の視点・感性でもって、自由自在に(コレという正解はありませんから)扱う題材とテーマを探してほしい。それもあわせて、研究する愉しみです。願わくば、日本文学の垣根をこえ、彼が愛読する中国古典の怪奇小説『聊斎志異』であったり、鷗外も訳したゲーテといった世界文学へも射程がのばせたら、検討はより深まりますね。


 授業的には、導入講義に続いて、扱う楽曲/作家・作品/テーマを多角的に確認してピックアップします。そのなかから、参加者が関心あるものについて各自発表し、それを受けて全員でディスカッションを重ねていきます。あくまでもサウンド面ではなく、言葉(の問題)に集中した分析・検討を行いますので、毎回、扱う楽曲の「歌詞」を精読してくることは欠かせません。また少なくとも、自分の担当にあたっては、当該作品の通読も必要となります。なるべく負荷が大きくなり過ぎず、それでもエレカシの本源へ迫れる発表バランス構成も一緒に考えましょう。もちろん、さまざまな楽曲をともに〈聴く〉ことも、おおいにしましょう。

【進め方について】
☆授業スタイルは、オンライン配信(リアルタイム)授業を基本とします。そこへ初回導入とまとめを含む数回の対面授業を挟む予定です。詳細は科目登録頃に「授業計画」と「備考」であらためて示します。
・受講人数と関心によって、発表(形式)をどうするかの詳細は、柔軟に相談して決めます。
・レポート等の課題提出は基本ありません(急な休講等の補完をのぞく)。
・講義回以外は、私もディスカッションの参加者のひとりです。日本文学・文化、ポップカルチャーの観点から、発表報告に対してコメント等はもちろんしますが、それ以降は一緒に考える「仲間」でありたいというのが願いです。活発に、対等に、対話をし合えたら素敵ですよね、という想いです。よろしくどうぞ。

授業計画

このクラスでは、集った受講生の関心も考慮しつつ、以下のパートを柔軟に構成しながら進行していきます。
 
 ・担当教員による「導入・ミニ講義」
 ・各自の関心にもとづく「個人発表」
 ・これらをもとにした、受講生全員による「ディスカッション」
 ・ゲスト講師による特別授業 【予定】

【授業形態】
オンライン配信(リアルタイム)を主とする。その合間に、対面授業を挟む予定です。 ※秋学期登録時に再度確認をすること