複合文化論系演習(日本の美意識)

基本情報

科目名
複合文化論系演習(日本の美意識)
副題
日本の古典文化における「美」の観念
プログラム
超域文化
授業タイプ
演習
担当教員
陣野英則
曜日
金曜日
時限
5時限
授業シラバス
[シラバスへのリンク]

授業概要

 日本の美意識に関係のありそうな観念をとりあげてみる。とはいっても、日本古来のそうした観念が日本の中で生みだされたとは限らない。たとえば、十世紀初頭、『古今和歌集』の仮名序と真名序などは、はやくも美的な理念を示していたとも見なしうる。しかし、それらは中国古典(『毛詩』大序など)にかなり依拠しているものでもあった。そもそも、抽象的な「美」もしくは「美意識」をあらわす和語が、平安時代中期あたりまではまったくなかったというべきであろう。「みやび」という古語はあったものの、それは理念とよべるものではなかった。『源氏物語』の「もののあはれ」にしても、近世の本居宣長が『源氏物語』(特に「蛍」巻の物語論)をもとにしてあらたにつくりだした理念である。『源氏物語』の成立した時代にそういう理念があったわけではない。
 一方、中世以降の日本で用いられるようになった「幽玄」「わび」「さび」などは、抽象度の高い美的観念たりえているだろう。ただし、用いられるコンテクストによってその観念の内実は相当にひらきがある。このように、個々の言葉に即してみてゆくと、簡単にはとらえにくい面が多い。
 この授業では、上記のようないくつかの問題点を確認した上で、「美」に関わる理念がどのようにしてつくりだされたのかということをさまざまな例にもとづいて考えてみたい。あわせて、そうした理念がつくりだされる以前の「美」的なもののありかについても考えてもらいたいとおもう。
 受講者には、授業計画に掲げるテーマの中から一つを選択して発表に取り組んでもらう。あわせて、こうした問題に関わる課題図書を示し、それらについても各自に学んでもらう機会をつくる。詳細は第1回めのオリエンテーションで説明する。

授業計画

1:
第1回
オリエンテーション、和文による「美」のあらわし方
2:
第2回
『古今和歌集』の真名序・仮名序にみられる理念と言葉(1)
3:
第3回
『古今和歌集』の真名序・仮名序にみられる理念と言葉(2)
4:
第4回
「艶(えん)」をめぐって
5:
第5回
「ますらをぶり」と「たをやめぶり」
*担当者による発表(以下、第13回まで同様)。
6:
第6回
「をかし」
7:
第7回
「あはれ」と「もののあはれ」
8:
第8回
「いろごのみ」
9:
第9回
「すき」と「数奇」
10:
第10回
「有心」と「無心」
11:
第11回
「わび」と「さび」
12:
第12回
「無常」(1)
13:
第13回
「無常」(2)
14:
第14回
理解度の確認テスト、テストの解説、まとめ