翻訳とその諸問題

基本情報

科目名
翻訳とその諸問題
副題
日本児童文学界における外国文学作品(主にロシア文学)の翻訳をめぐって
プログラム
超域文化
授業タイプ
講義科目
担当教員
南平かおり
時限
オンデマンド
授業シラバス
[シラバスへのリンク]

授業概要

 本授業はオンデマンド授業である。
 本授業では、「日本児童文学界における外国文学翻訳作品」の諸問題について取り上げる。
 日本の児童文学界の中で「翻訳」をめぐる問題は大変重要であり、検討すべき要素をはらんでいる。
 大正7(1918)年の「赤い鳥」誌誕生から、昭和25(1950)年に日本の児童文学の世界に新風を巻き起こした「岩波少年文庫」創刊までの時期を中心に、「翻訳」の在り方の歴史を辿る。「原語からの直接訳でなければならないのか」、「抄訳ではなく完訳であるべきなのか」、さらには「翻訳者による再話は許されるのか」という大きな問題について、様々な角度から検討していく。具体的には、主だった翻訳者を取り上げ、その翻訳方法について考察しながら、授業を進めていく。
 この授業では、特にロシアの児童文学作品を例にとって学んでいくが、折に触れ他の外国作品についても取り上げる。
 児童向けの翻訳の場合は、漢字の使い方や、言葉の言い回しなど大人向けの翻訳とは違った心遣いが必要になってくる。「花」を「お花」といえば、児童文学になるわけではない。
 児童文学についての知識も学びながら、「翻訳」における様々な問題についてじっくり考えていきたい。
 受講生には積極的に「翻訳」と向き合ってもらいたいと考える。

授業計画

1:
第1回
オリエンテーション
本講義の目的と概要について説明する。
2:
第2回
・「星の王子さま」における新訳とその諸問題
・新訳に取り組んだ翻訳者たちについて
3:
第3回
・「翻訳とはなにか」
・「新訳」における翻訳とその諸問題
4:
第4回
・再話とはなにか
・ロシア民話「おおきなかぶ」の再話について
・日本における「おおきなかぶ」の翻訳・紹介の始まり
5:
第5回
・「おおきなかぶ」の内田莉莎子訳と西郷竹彦訳の比較検討
・「累積昔話」とはなにか。
6:
第6回
・「おおきなかぶ」の翻訳にまつわるあれこれ
・「魔法昔話」とはなにか。
7:
第7回
・「日本児童文学界におけるロシア・ソ連文学作品の翻訳とその諸問題
・雑誌「赤い鳥」とは
・「芸術座」と児童文学
8:
第8回
・ロシア文学者ではない児童文学者による翻訳と紹介~楠山正雄の場合
・翻訳テキストの選択~ソログープの作品が日本の児童に紹介されることになった背景

9:
第9回
・ロシア文学者ではない児童文学者による翻訳と紹介~浜田廣介の場合
・ロシア文学者ではない児童文学者による翻訳と紹介~浜田廣介、前田晁、原秀雄によるソログープ作品の翻訳比較
10:
第10回
・児童文学者ではないロシア文学者による翻訳と紹介~昇曙夢の場合
11:
第11回
・1950年創刊の「岩波少年文庫」における翻訳の意味について
・マルシャークの『森は生きている』と翻訳者湯浅芳子について
12:
第12回
・1960年代に児童文学界で巻き起こった「完訳論争」について
13:
第13回
・「名前」と翻訳とその諸問題
・「韻文」と翻訳とその諸問題
14:
第14回
・ソ連時代の作家バジョーフの「石の花」を含む14篇収録の『孔雀石の小箱』(1939)の創作意図について
・日本の翻訳者たち(1953年から63年)は「石の花」をどのように捉えたか