世界の言語と日本語

基本情報

科目名
世界の言語と日本語
副題
言語類型論の新展開と日本語
プログラム
言語文化
授業タイプ
講義科目
担当教員
吉田健二
曜日
木曜日
時限
3時限
教室
34-453
授業シラバス
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授業概要

 言語類型論(Linguistic Typology)は、世界の言語の特徴をできる限り広く調べ、ヒトの言語に共通の(普遍的な?)要素は何か、逆にどこまで多様に異なりうるのかを明らかにしようとする研究分野です。近年、言語類型論は、近接諸科学との連携により、方法論や研究対象を拡大・多様化し、進化を遂げつつあると思われます。この授業は、科目名が示すように、世界の言語の類型論的傾向に照らしたときの日本語の位置・特徴の考察を中心に展開しますが、それを通して、言語類型論の研究上のアプローチ、この分野で明らかになるヒトの言語や認知能力に対する知見、理論上の問題点や課題等についての理解を深めることを、もう一つの目標とします。このため、言語類型論の全体を概観するのではなく、日本語に関連して興味深い洞察を提供してくれるいくつかのトピックに絞り、研究上の手続きを具体的に検討し、さらに一部のトピックについては簡単な分析・実験も実施し、理論的な問題点について考察を深める計画です。とくに(1)従来の「記述的アプローチ」、(2)認知科学・心理学等による「実験的アプローチ」、(3)生物学等による「統計的アプローチ」に焦点を当て、(1)についてはWALS(下記)という公開データベースを利用し、(2)については受講者といっしょに実験計画を立てて、小規模の模擬研究を実施することを考えています。授業中の課題と、これを発展させた期末レポートによって評価を与えます。受講に際しては、「言語学概論」等、言語学の基礎的な知識があることを前提とします。

授業計画

1: 第1回
導入:言語類型論の3つのアプローチとデータ

2: 第2回
データ:いくつの言語を調べればいいか

3: 第3回
格組織のタイプと日本語の位置

4: 第4回
WALSのデータを加工する

5: 第5回
言語組織と認知の関係:Sapia-Whorf仮説

6: 第6回
色彩語彙の普遍的傾向:日本語は例外か

7: 第7回
音韻の複雑さを決める要因1:言語人口

8: 第8回
言語音韻の複雑さを決める要因2:人類のアフリカからの拡散

9: 第9回
日本語の起源と音韻の複雑さ:日本語は例外的か

10: 第10回
言語獲得と認知発達の関係:性・数のある言語とない言語

11: 第11回
接尾辞優位傾向:発話処理の利便性か過去の反映か

12: 第12回
日本語に「主語」は必要か

13: 第13回
敬語の複雑さ:どう評価するか、日本語は複雑か

14: 第14回
親族名称:普遍的傾向を情報理論から説明する

15: 第15回
まとめ:日本語は特殊な言語か / レポートについて