世界の言語と日本語

基本情報

科目名
世界の言語と日本語
プログラム
言語文化
授業タイプ
講義科目
担当教員
吉田健二
曜日
木曜日
時限
3時限
教室
36-682
授業シラバス
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授業概要

 言語類型論(Linguistic Typology)は,世界の言語の特徴をできる限り広く調べ,ヒトの言語に共通の-普遍的な要素は何か(そもそも普遍的な要素はあるのか),逆に,言語はどこまで多様に異なりうるのかを明らかにしようとする研究分野です.近年,言語類型論は,近接諸科学との連携により,方法論や研究対象を拡大・多様化し,進化を遂げつつあると思われます.この授業は,科目名が示すように,世界の言語の類型論的傾向に照らしたときの日本語の位置・特徴の考察を中心に展開しますが,それを通して,言語類型論の研究上のアプローチ,この分野で明らかになるヒトの言語や認知能力に対する知見,理論上の問題点や課題等についての理解を深めることを,もう一つの目標とします.このため,言語類型論の全体を概観するのではなく,日本語に関連して興味深い洞察を提供してくれるいくつかのトピックに絞り,研究上の手続きを具体的に検討し,理論的な問題点について考察を深める計画です.研究上のアプローチに関しては,この授業では,(1)従来の「記述的アプローチ」,(2)認知科学・心理学等による「実験的アプローチ」,(3)生物学等による「統計的アプローチ」に焦点を当てます.(1)についてはドイツMax-Placnk研究所が開発・管理する言語類型論の公開データベースWorld Atlas of Language Structure(WALS)を利用し,(2)については条件が整えば受講者といっしょに実験計画を立てて,小規模の模擬研究を実施することを考えています.授業中の課題と,これを発展させた期末レポートによって評価を与えます.受講に際しては,「言語学概論」等,言語学の基礎的な知識があることを前提とします.

授業計画

第1回
導入:言語類型論の目標 / WALS紹介

第2回
言語サンプル数の問題:SVO語順を例に

第3回
言語の「普遍要素」1:音節のない言語はあるか

第4回
言語の「普遍要素」2:主語のない言語はあるか

第5回
希少な類型の意義:統語の階層構造のない(?)言語

第6回
言語組織と認知の関係:色彩語彙と数詞

第7回
言語類型の変化:格組織タイプとその歴史的変化

第8回
「統計的」な「普遍性」:接尾辞優位傾向の理由

第9回
言語タイプを決める要因:親族名称と声調

第10回
人間の聴覚特性と言語普遍性:イントネーション

第11回
言語単位の普遍性:トーンと関西・四国方言の「式」

第12回
言語の複雑さを決める要因:移住と人口ボトルネック

第13回
言語の歴史と言語の複雑さ:日本語と日本人の歴史

第14回
言語構造と文化:日本語の敬語は「特殊」か

第15回
まとめ:日本語は類型論的にみて「特殊」か